空飛ぶ子ネズミのように見えながら・・・ 「セッカ」

長めの尾を入れても12㎝といいますから、スズメよりも一回り小さな小鳥です。小さな体が、淡い褐色の下地に黒褐色のまだら模様という地味な装いをしているので、ススキの茎に止まって朝風に羽根が逆立っている様子などは、いよいよ心細く見えます。

よくとおる澄んだ声で「ヒッ ヒッ ヒッ」と鳴きながら上昇し、「ジャ ジャ ジャ」とすこし濁った声で下降します。小刻みに羽根を動かしていますが、その割に、空気をつかんで飛翔するという感じではなく、おおぎょうに言うと、溺れているという印象を受けるほどです。 “空飛ぶ子ネズミのように見えながら・・・ 「セッカ」” の続きを読む

平和のための創造

1 日本の若者たち・・・うかがえる完全主義
2 日本国憲法の創造性
3 JICAの実績を継ぐもの
4 まとめ

1 日本の若者たち・・・うかがえる完全主義

毎年発行される内閣府からの「子ども・若者白書」「少子化社会対策白書」に見るように、日本の若者はこのところ、自己評価が低く、社会を厳しいと受け止め、成功の保証のないことに手を染めるのを避けたがり、将来を悲観的に予測する、といった傾向が諸外国に比べて高くなっている。 “平和のための創造” の続きを読む

「カッコウ」をめぐる「オナガ」「モズ」「ホオジロ」の物語

生命の種のありようの変化、つまり「進化」というものは意外に速く進行することがあり、ともすると私たちの身近に目のあたりにするチャンスすらありそうなのです。

1 話は「遺伝か環境か」というところから始まる
2 「カッコウ」の登場
3 「オナガ」の登場
4 「オナガ」の防衛
5 「オナガ」復帰の兆し
6 まとめ

1 話は「遺伝か環境か」というところから始まる

両親から受け継いだ遺伝子の配列そのものは生涯を通して不変であると考えられます。ところが、例えば一卵性双生児は互いに全く同じ遺伝子情報を持っているのですから、一方が統合失調症を発症したら相方も100%発病するかというと、これがそうではないのです。50%ほどは発病しないという事実がかなり前から知られています。
遺伝子が生物を規定する力は強大であるけれども、必ずしも運命を決定するものではなく、環境が作用するところも大きいことを示しています。
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現在の若者たちはどのように育つか

戦後ほぼ一貫して育まれ続けた社会通念と構造。これが多分、誰もが予想しなかったような速度で変遷した。1980年代の終わり頃からであるという。
その原因を乱暴に要約すれば、その頃から決定的になった「IT技術の爆発的な発展普及」と「新興国の台頭」とであろう。ITの発達によってもたらされる情報をてんでんに拾うようになったことで人々の価値観と欲望は多様化し、消費をするにあたっては、情報がピンポイントで得られるようになっただけに、何をどのように選択するのが賢いか、というパフォーマンスへの評価が次第にマニアックに厳しくなってゆく。

1 終身雇用制の瓦解がもたらしたもの
2 目標とされる成人像の変化
3 揺れる学校生活
4 まとめ

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ほんのひと昔前まで・・・人はどのように育ったか

1980年代までのこの国において、「人はどのように育ったか」を筆者なりのまとめをしてみたい。現在のそれと比較できればと思うからである。

1 高い成長を続けた稀有の20年
2 図にしてみる
3 ロバ的な適応の功罪
4 マイノリティのさまざま

1 高い成長を続けた稀有の20年

日本は、戦後10年を過ぎたころから年10%前後の経済成長を20年近くも続けてきた。乱暴な要約であろうが、「年功序列を基本として仕事を保障される」という独特な就労慣行が好循環を支え続けたもので、世界の歴史上でも稀有のことだという。給与は低く抑えられる傾向と引き換えではあったが、所得に対する安心感は高く、それも右肩上がりの経済成長のおかげで着実に豊かになってゆくという実感を人々は持ち続けることができた。「地道に努力すれば相応に報われる」「安寧と秩序」ということが社会的価値の物差しとして強く機能し、公共の場における行動の仕方もはっきりしており、「一億総中流」という表現は、この国の人々のメンタリティにしっくりと馴染むところがあった。「平等感」というものは人々のストレスを軽減させる大きな要素の一つである。 “ほんのひと昔前まで・・・人はどのように育ったか” の続きを読む

子どもに家事を分担してもらうことの意義

1 日本の中学生は、テレビなどを見る時間が長い
2 日本の家庭は「子どもの家事手伝い」に消極的
3 母親たちの認識
4 花王株式会社と成徳大学の調査
4-1調査の要約
4-2家事に前向きな子どもたちの特性
5 家事にコミットさせるのは、子どもの人格を認めること           

1 日本の中学生は、テレビなどを見る時間が長い

いくらか古いデータであるが、2003年に国際教育到達度評価学会(IEA)が「中学生の宿題をする時間とテレビ・ビデオを見る時間」について調査をしたことがある。 “子どもに家事を分担してもらうことの意義” の続きを読む

ヒトはなんとなく奇妙な積み上げをすることがある・・・私と剪定鋏

25年ほども前になる。ホームセンターで小さな剪定鋏を買った。
こうした道具を手に入れるときは、刃の擦り合わせや握り具合などの使い勝手を素人なりに納得したいものだが、ちかごろは難しくなっている。手にとって試すことができない。似たようなものが、似たように透明な硬いフィルムでラップされ、並んだ掛け金から層をなしてずらりと垂れている。
ひとつを抜きあげて裏返すと、「いったん木を挟んだら横にこじってはいけません」などと印刷してある。買い手はそろって小学生同然のレベルと想定しているらしい。

小さな剪定鋏との出会い

運にまかせて私が手に入れた剪定鋏は、しかし大当たりだった。切れる。小さくて軽い。スコリと枝を切り終えた手応えと、元に返るバネの調子がことに良好で、長時間使っても疲れない。切れが鈍くなったら研ぎさえすれば、新品と同様にもどる。泉州は堺で作られているものだった。 “ヒトはなんとなく奇妙な積み上げをすることがある・・・私と剪定鋏” の続きを読む

子どもを情報の洪水にさらす前に

次のような順序で考えたいと思う。

1 土地を占有するという着想がもたらした一大転換
2 津波のような「情報のビックバン」
3 一緒に日常を体験するという命綱
4 難しく考えずにやることをやる
5 まとめ

1 土地を占有するという着想がもたらした一大転換

現生人類は15万年ほど前にあらわれた。なお長く、木の実などを採集し、動物を狩り、魚貝を集めながら小さな集団を成して移動しており、たとえば、「土地を所有する」などという概念は存在しなかった。 “子どもを情報の洪水にさらす前に” の続きを読む

イギリスやロシアでも・・・スプーン おたま  「エナガ」

春先のある日、里山で薪割りの作業をしていると、ことさら小さな小鳥が近くの古木の根元に来ては、しきりに何かをついばんで行くのに気付きました。巣の材料を集めていたのです。「エナガ」という小鳥をそのとき教えられました。挨拶してもらいます。

ちょっと恥ずかしいかな・・・エナガです

ふわふわしてマシュマロが飛び回っているようです。体長は14cmほどありますが、半分は長い尾が占めているので、体重はわずか8gばかり。同じぐらいの体長を持つスズメが24gあるので、その軽さ加減が分かります。 “イギリスやロシアでも・・・スプーン おたま  「エナガ」” の続きを読む

共感と信頼感はどのようにして芽吹いてくるか

現在の赤ん坊は、人類が何万年もかかって発展させてきた「言語の習得」ということを、ほんの数年のうちに凝縮してやってのけるという驚くべき能力を備えている。

生理的な欲求をめぐる共同作業

まず赤子は、空腹、不快、苦痛などを感じると泣く。泣くという「信号」を発すると、乳がもらえ、あるいはオムツが替えられ、苦痛や不快が取り除かれる。こういうことを繰り返しているうちに、「泣けば・・・してくれるだろう」という「予測」が生まれ、親の方は「この泣き方は・・・したのだろう」という「判断」をなし、対応した結果は赤ん坊にとっても親にとっても、当たったり外れたりする。 “共感と信頼感はどのようにして芽吹いてくるか” の続きを読む