憧れの「ツミ」

日本で一番小さい猛禽類

ようやく、出会いました。
初夏の林の中。左手から飛来して、少し離れた枝に止まった鳥の影。
キジバトかと思いましたが、身体を斜めに倒して止まることの多いキジバトと違って、太目の身体をまっすぐに立ててこちらを見ています。

「ツミ!」
日本で一番小型の猛禽類。
画像の1枚だけを見ると、達磨さんのようにどっしりと大きく感じられますが・・・小柄なのです。
スズメのように小さい鷹ということで、漢字では昔から「雀鷹」と書かれ、スズメタカというのがススミタカに、次第に短く詰まって、ススミ、スミなどとなり、何時の頃からか「ツミ」となったということです。

頭部から背面は青味がかった黒褐色。胸から腹にかけてはカーキーの粗目の横縞。黄色の光彩。同じく黄色をした頑丈そうな脚が目立ちます。

オス・メス  違う種類かと思われるほど 

幾つかの写真に揚げたのは、実はメスのツミ。
昔から知られていたことですが、オス・メスの違いが大きいのです。それを図にまとめてみました。

精悍で気が強い 

ツミは小型であるだけに小回りが利き、小鳥たちを襲撃して主食としていますが、コウモリ、ネズミ、トカゲ、小型のヘビなどを捕らえることがあり、バッタ、カマキリ、セミなどの昆虫も食べます。
身体の小さいオスは殊に俊敏で、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、エナガ、ホウジロなどを巧みに捕え、一方、体格の大きいメスはムクドリやオナガやキジバトなど大きめの鳥も狩りの対象にします。

古く、鷹狩(放鷹)が盛んだったころには、狙う小鳥の種類が違うことから、オスとメスを別けて扱っていました。
メスのことを「ツミ」と呼び、オスのことを「エッサイ(悦哉)」と呼んでいたそうです。「悦哉」というのは「よろこばしいかな」という意味でしょうから、鷹を使う人にとっては、オスのツミはとりわけ仕込み甲斐があったとみえます。

そのはずです。
ツミは小兵ながら気が強く、カラスを襲撃することさえあります。
そのカラスといえば、その荒っぽさは有名で、トビを追い掛け回しているのはよく見られる光景です。他の猛禽類と活劇を繰り広げるのもしばしばのことで、例えば、木の上で食事中のミサゴから魚を奪おうとして数匹が巧みに連携し合って挑みかかり、これに辟易したミサゴがご馳走を半分ほど残して退散するのを見たことがあります。
ツミは、そんなカラスにさえ向かってゆくのですから、鷹匠たちをたまらずわくわくさせたに違いありません。

オナガ(何回か紹介したことがあります)という中型の鳥は、乱暴なカラスに挑んでゆくツミの勇猛を当てにして、ツミの巣の周り50メートルほどを間借りすることがあります。集合して営巣するのです。・・・この頃はツミもオナガも少なくなったせいか私は見たことがありませんが・・・。
オナガたちは、ツミに襲われるリスクよりも、カラスに卵を奪われる被害の方が深刻だと計算しているわけです。

潔癖? 衛生好き?

ツミの分布図を示しました。
ツミの大部分は、ユーラシア大陸の北部と北海道で繁殖し、秋になると南に渡って、九州と東南アジアで越冬します。一部は移動せずに日本の本州に周年棲息します。つまり一部は留鳥です。

本州で繁殖をするとなると、北方とは違って、梅雨時のジメジメした環境での子育てということになります。
ツミはオス・メスが協力して、針葉樹の樹上を好んで巣作りをしますが、材料の枝を地面からは拾わず、生木の細い枝をクチバシでへし折って集め、仕上げには杉の葉を敷き詰めます。
湿った環境への適応なのかどうか、落ちている枝に付着している雑菌を嫌い、杉葉の消毒効果を活用するためだとされています。
勇猛であるばかりではなく、なかなか賢くもあるのです。

市街地に進出している?

このところ、「市街地に猛禽類が進出して来ている」という話をよく聞きます。東京西部の多摩地区でも、ちょっとした公園の林や街路樹などで、ツミが巣を掛けて子育てをしているのが見られるということです。

ツミが営巣するとしたら、餌になる小鳥や小動物がその付近に不足しないということが必須な条件となります。街で子育てをするとなると、ヒトに近すぎるというマイナスを埋め合わすためには、餌に不足しないどころか、潤沢にあることが必要だろうと思うのですが・・・。
公園や並木道に、小鳥や昆虫が豊富なのでしょうか?

「里山」と呼ばれている不思議な区域は、ヒトの営みと自然とがバランス良く混じり合っていて、そこには野鳥や小動物などが意外に多く生息していることは私も知っています。
住宅街が里山と移行し合い、混じり合っているような微妙な場所。そんなところにツミが営巣することがあるとしたら・・・それは、「猛禽類が進出している」というような生息地の拡大ではなく、「目立つようになっている」ということだと私は思います。

鷹たちは飛ぶ

さて、初めてツミにお目にかかってから数日後、同じ森の上空はるか高く、タカ類らしいものが飛翔しているのに気付きました・・・あのツミか!
あわてて連写しましたが、残念ながら、私の腕前ではピントが外れてしまって、うっすらにしても鷹斑(たかふ・胸の褐色の横縞)が認められることから鷹には違いないのですが、ツミなのかオオタカなのか判然としません。
頼りない判断ですが、胸の横縞がこまかく整然と見えるところから、オオタカとするのが当たりのようです。

奥多摩の森でのピントの合った鷹の写真があります。
胸の横縞が荒いところから、ツミかハイタカであるようですが、そのどちらであるかを判別するのは無理がありましょう。

嬉しいことに、私たちの遠くないところで、鷹たちは飛翔しているのです。

 

蜜を採る? 盗る?

  目次
1 ホウジャクの花めぐり 
2 蜜泥棒?
3 キアゲハの花めぐり 蝶たちは盗蜜者?
4 その他のチョウの花めぐり 盗蜜?
5 クマバチの花めぐり 盗蜜?
6 植物はそんなに間抜け?
7 華麗な蜜泥棒 ホウジャク
8 この大絶滅時代を

1 ホウジャクの花めぐり

また「ホシホウジャク(星蜂雀)」の登場です。
止まっている時(翅を休めているのを見かけることは滅多にないのですが)は、ありきたりの蛾としか言いようがなく、不気味に迷彩されたデルタ翼の戦闘機のようにずんぐりと不機嫌そうに見えます。その通り、ホウジャクは蛾の一種なのでした。

これが一転、蜜を求めて巡るとなると!
「公園の生垣でハチドリを見た」と騒がれることがあるように、見事なホバリングとホバリングを折れ線のように組み合わせて、腰の黄色のマークを目立たせながら、あたりの蜜を独り占めしたいとばかりに弾むように舞います。初めてホウジャクに気付いた人が、「ハチドリ?」と思ってしまうのも無理はありません。
秋口になって、アベリア、ヘクソカズラ、カクトラノオといった野花が咲き揃うようになると、ラッパ型をした花の奥に分泌されている蜜を吸い上げようとホウジャクたちは夢中になります。

この動画中の花群は「カクトラノオ」というのだそうです…茎の断面が四角(シソ科に共通)で、花房の先がピンと立てた虎の尾のように見えることから「カク・トラノオ」

ホウジャクは、長く伸ばした口吻を迷うことなく差し入れて蜜を吸い上げ、次から次へと移ろって行きます。改めて気付いてみると、脚は行儀よく折りたたまれていて、身体が花弁に触れることが全くありません。

見ているうちにだんだんと気になってきます。
花と昆虫とは「受粉」と「蜜」とを介して、かなり厳密な「ウィン・ウィン関係」にあるのだと教えられてきたのに・・・これはどうだ。
ホシホウジャクは花粉を運ぶことなく、ちゃっかりと、花から沢山の蜜をせしめているように見えますが?
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