渓流の貴婦人 キセキレイ Ⅱ

渓流の揃い踏み

多摩川の河川敷では3種類のセキレイがよく見られます。どれも、私が大好きな小鳥たちなので、それぞれに、私なりのあだ名を付けています。

 キセキレイ(黄鶺鴒): 渓流の貴婦人  
 セグロセキレイ(背黒鶺鴒): 渓流の鞍馬天狗
 ハクセキレイ(白鶺鴒): 渓流の若衆

どれも、スズメよりも少し大き目な身体に尾が長くてスマート。尾をリズミカルに上下に振りながら歩き、大きく波状の飛跡を残しながら飛びます。

互いの見分けは難しくありません。
キセキレイは名前の通り淡い黄色。そのグラデーションが綺麗です。
セグロセキレイは背ばかりか頬も喉も黒いので黒覆面を被ったよう。それで鞍馬天狗。
ハクセキレイは全体に白と印象されるうえに行動範囲が広く、河川を離れた公園や駐車場などでセキレイを見掛けたなら、先ずこれ。上の二種よりちょっと小ぶりな感じで、行動範囲が広く軽快なので若衆。

ハクセキレイはユーラシアとアフリカに広く分布しており、その行動が活発なせいか、このところ数を増しつつあるとされています。キセキレイも生息範囲は広いものの、押され気味。
セグロセキレイは日本固有種で、残念なことに数を減らしつつあるとされていますが、このところの私の印象では、一息ついているのではないかと思われます。

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ウグイス Ⅲ 心ひかれる声 何故?

心ひかれるウグイスの声

いまさら云うまでもありません。
ウグイスの澄んだ鳴き声は昔から人の心を引き付けてきました。
春の景色を謳った有名な漢詩に「千里鶯啼いて緑紅に映ず・・・」とあるとおりです。

こちらが待ち受けていると微妙に間合いを外されたり、喉の引っ掛かりが悪くて不発にずっこけてしまったりすることがしばしばあるので、それがまた、人を引き付けて逸らさないのかも知れません。
調子が乱れてさえも、その音色は澄んでいて、一生懸命ですから、聞いている方が切なくなってくるほどです。 “ウグイス Ⅲ 心ひかれる声 何故?” の続きを読む

静かに潜行? ガビチョウ Ⅱ

強烈なさえずり 京劇風な隈取

20年ほど前のことです。
いきなり、開発を逃れている小さな林の中に、大きく澄んださえずりが轟き渡りました。このあたりでは、ついぞ聞いたことのないものでした。
初めは、「逃げ出したカナリヤが鳴きかわしているのかな」と思われるほど美しく感じられたのですが、やがて、「いい加減で止めてほしい」と言いたくなるほどに疲れてきました。
切迫した感じで、大きく、長く、メリハリ無く続くのです。例えばウグイスのさえずりのような「間」というものがありません。
なかなか姿を見ることができませんでしたが、ある日の散歩の帰り、不意に例のさえずりが叩き付けるように耳に押し入ってきて、脇のヤブの下がガサゴソしました。

全体に茶褐色、ヒヨドリほどの大きさ。藪を縫うように、ボサボサという感じで低く飛びます。
目の周囲が、くっきりと白く化粧されています。「歌舞伎」や「京劇」の「隈取」のようです。

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里一番の「オラオラ顔」 シメ Ⅱ

ずんぐりシルエットに蝋色のクチバシ オラオラ顔

尻尾の短いずんぐりしたシルエットは、全体にキツネ色と印象されます。
スズメをひとまわり大きくしたほどのサイズに、ひときわ立派なクチバシを備えており、それが蝋のような色をしていることから「蝋嘴鳥(ろうしょうちょう)」とも呼ばれています。
「シッ シッ」と聞こえる地鳴きに、鳥を表す接尾語の「メ」をくっ付けたのが名前の由来です。


秋の終わりに、「ツグミ」や「イカル」と同じように北から渡ってくるのですが、早々に群れを解いて、冬は単独で過ごすことが多いようです。
黒く縁どられた鋭い目のせいもあってか、せっせっと落ち葉を跳ね飛ばして木の実を掘り出そうとしている様子は、塹壕を掘る歴戦の兵士のように真剣そのものです。

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「月・日・星」と鳴く 三光の鳥 「イカル」-Ⅱ

黒覆面に鋭い目つき

「イカル-Ⅰ」にも記しました。
ずんぐりと見える灰色の身体の上に黒覆面か黒頭巾。そこから突き出しているピラミッドのようなクチバシ。けっこうに鋭い目つき。・・・イカルが一羽で木の枝に居ると、「こわもて」といった雰囲気です。幾度見ても、これらには変わりはありません。
冬の林を歩いていると、かなり前方の枯葉の中から飛び立ち、ほとほとと縦に掻き昇る感じで高い枝にとまり、長い間、こちらを窺っていることがあります。なかなかに用心深くもあるのです。

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ツグミ 追憶

美しい胸と姿勢

ツグミは、散歩好きの人には、まず馴染みのある野鳥でしょう。
スズメより二回りほどもある身体つきは頑丈そうで重量感があります。全体に地味ですが、アサリ貝を思わすような胸の模様がたいそう美しい個体があるので、出会うたびにレンズの向こうにクローズアップして確かめないではいられないような奥深さがあります。

秋にシベリアなどから渡って来てしばらくすると、ばらばらに群を解いて冬を過ごします。
シャンと背筋を伸ばし、両脚を揃えながらホッピングして枯草の下の虫をさがし、また伸びあがってあたりをうかがう、という様子も印象的です。低く飛びながら「ケロッケロッ」と小さい声を漏らすことがありますがサエズリということをしません。口をつぐんでいることから、「ツグミ」と呼ばれるようになったということです。

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風の中の 「ウグイス」

声はすれども、姿は・・・?

「梅にウグイス」とよく言われるように、ウグイスは昔から、のどかな春の景色の千両役者とされています。
どうも、これは作られたイメージです。ウグイスは、まず、梅の花を訪れません。
(梅の花の蜜が大好きなのは、メジロ。取り違えられるのも無理はありません。一回り小型ではあるものの、ウグイス色に近いダークグリーンをしているので、つい思い入れが先走ってしまうのでしょう。メジロは、群で行動することが多く、なによりも、目の周囲が白いリングでくっきりと縁取りされているので見分けは容易なのですが)

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こってり好み 「シジュウカラ」

シジュウカラ 頑張る

シジュウカラはスズメほどの大きさの小鳥です。
モスグリーンのジャケットに白いチョッキ、黒い巾広のネクタイ、といった装い。春先に巣を構えるころ、「ツツピン ツツピン」と力強く響くオスのさえずり・・・。
「ああ、あれか」と思い当たる人が多いと思います。

ちょっとした林があれば、住宅街の公園などでも個体数を増やしつつあるようで、このところ減少の目立つスズメよりも多くなっているのでは、と感じられるほどです。小さいけれどエネルギッシュで逞しいのです。

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菜食主義者 ヒヨドリ

灰色の野盗

里山を荒らしまわる灰色の野盗の群。
これがこのところ元気印の「ヒヨドリ」の印象です。「ヒーヨ!ヒーヨ!」と甲高く鳴き交わしながら、チームワーク良く見張りを怠らず、あちらのブロッコリー、こちらの柿、ついにはエンドウの苗までをターゲットに荒らしまわります。首をかしげてこちらを窺っているときなどは凄みが効いていて、「なるほど、鳥類は恐竜の子孫なんだ」と感じ入ることがあります。

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寒風のモズ

剣豪宮本武蔵はモズが気に入っていたようです。
秋も9月の末ごろから、枝先で「キーイ、キリキリ、キリ」と鋭く高鳴きして凛々と縄張り宣言をし、スズメよりも少し大き目といった体格でありながら、あたりを睥睨している孤高なありさまを自分に擬していたのでしょう。
ワシ・タカ類のようにクチバシの先が鉤状に曲がっていて、徹底した肉食のハンターであることにも、剣豪は共感したのかも知れません。
モズの風格はご覧の通りです。

宮本武蔵は「枯木鳴鵙図」という、モズをモチーフにした水墨画を残していますが、これは「重要文化財」に指定されているほどの出来栄えとされています。

「枯木鳴鵙図」には、枯れ立った一本の枝の先でモズが満を持しているありさまが緊迫感を放って描かれていますが、どういうわけか、その垂直の枝の途中に一匹の「イモムシ」のようなものが小さく添えられています。腕利きのハンターとはいえ、モズに眞下の小虫が目に入るのは難しいと思います。
武蔵は「灯台元暗し」というようなことまで言おうとしたのか。あるいは、気の抜けた一点があるからこそ、作品の密度が全体としては高まるということを計算してのことなのでしょうか。

モズは、「モズのはやにえ」と呼ばれる乱暴な習性をむき出しにして、見せしめのようなことをします。尖った小枝や有刺鉄線に捕まえた獲物を串刺しにして干物にするのです。冬に備えて蓄えて置くのだというのがおおかたの説明のようですが、その方の研究者によると、そのまま放っておかれることも少なくないようです。どうしてでしょう。

静と動、柔と剛。宮本武蔵にもモズにも、つまり達人たちには、ちょっと分からないところがあります。