静かに潜行? ガビチョウ Ⅱ

強烈なさえずり 京劇風な隈取

20年ほど前のことです。
いきなり、開発を逃れている小さな林の中に、大きく澄んださえずりが轟き渡りました。このあたりでは、ついぞ聞いたことのないものでした。
初めは、「逃げ出したカナリヤが鳴きかわしているのかな」と思われるほど美しく感じられたのですが、やがて、「いい加減で止めてほしい」と言いたくなるほどに疲れてきました。
切迫した感じで、大きく、長く、メリハリ無く続くのです。例えばウグイスのさえずりのような「間」というものがありません。
なかなか姿を見ることができませんでしたが、ある日の散歩の帰り、不意に例のさえずりが叩き付けるように耳に押し入ってきて、脇のヤブの下がガサゴソしました。

全体に茶褐色、ヒヨドリほどの大きさ。藪を縫うように、ボサボサという感じで低く飛びます。
目の周囲が、くっきりと白く化粧されています。「歌舞伎」や「京劇」の「隈取」のようです。


「ガビチョウ」を漢字で書くと「画眉鳥」。本来の生息地は中国南部から東南アジア北部。
江戸時代からぽつりぽつりと日本に入って来ていたそうですが、1970年代に折からのペットブームで輸入が急増。おそらく、「よく鳴きすぎる」ということで飽きられたのでしょう、飼いあぐねた人から「かごぬけ」。あるいは、売れ残りを抱えた業者が廃棄放鳥。

地上を走り回って昆虫や果実を食べ、ヤブなどの低いところを好み、用心深くてあまり人目には付きたがりません。複雑にさえずるので「七色の声を持つ」ともいわれ、ウグイスやキビタキやシジュウカラなどの真似をすることがあるそうです。

ガビチョウ 進出して跋扈する

私は思うのですが、日本に持ち込まれた初期のころには、このあたりで生存してゆけるのだろうかとガビチョウも心細く、懸命に仲間や番いの相手を探したに違いありません。悲鳴のように、のべつ幕無しの必死の響きが込められたのでありましょう。

初期のガビチョウの懸命さは報われ、大変な勢いで個体数を増し、ある時期には、全山ただガビチョウの声だけが響き渡る、という事態にまでなってしまいました。やがて「日本生態学会」によって「侵略的外来種ワースト100選」に選定されるまでになりました。アライグマ、カミツキガメ、バス、アメリカシロヒトリ、イエシロアリといった堂々たるメンバーたちと並んでのことです。

このところ、深く静かに? 調和の兆しか?

ところが、このところ、「ガビチョウに煩わされることが少なくなった」というのが私の感じです。里山を歩いていても、ひところのようには目に付かないという印象です。
そういえば、この画像でのガビチョウのさえずりは、本来のガビチョウらしくなく、かなり控え目で、強弱と間もそれなりに上手に混ぜられています。自信が感じられます。

隠れ方が巧妙になったのかも知れません。・・・ありそうなことです。
ガビチョウのあのかしましい鳴き声にうんざりする回数が数年前よりも確実に減っているにもかかわらず、カサコソと、彼らが付近に潜んでいる気配は相変わらず感じられるのです。
本当に、深く静かに潜行することを学びつつあるのか。私だけの印象なのか。他の場所や地域での様子も気になるところです。

ヒトが関わって、また妙な捻じれが青い惑星の生物界に一つ増えたとすると・・・こうしたことが、例えば、「新型コロナウィルス」の出現と無関係と云えるのでしょうか。

ロウボウ

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

「静かに潜行? ガビチョウ Ⅱ」への6件のフィードバック

  1. ガビチョウ、確かに10年前と比較して山の中では聞かなくなりました。猟師に言わせると、派手に鳴かなくなったそうです。子供の頃、この隈取りが怖くて苦手な鳥でしたが…こうしてみると、格好良いと思います。

    1. コメントありがとうございます。
      貴方御自身と猟師の観察で、「ガビチョウのさえずりが減少しつつある」というのは「やはりそうか」といった感じです。
      ガビチョウの個体数そのものについては、どのように観られるのでしょうか。減少しているのでしょうか、潜行しているのでしょうか。
      貴方のお住まいは積雪のない地方、それに、このところイノシシやタヌキやアライグマやハクビシンが増えているのにつれて「猟師」という生業が成り立っているのですから、
      そう大きな都市ではないところ、となりそうですが・・・。
      よろしくお願いいたします。

      1. 関東圏の田舎町になります。
        自分が山のなかに分け入るのは1ヶ月に一度程度なので、数が減ったと思っていたのですが、ほぼ毎日入る猟師にとっては潜行しているだけ…だそうです。
        町中で見かけることもあるそうなのですが、残念ながら自分は気が付けておりません。

        1. やはり、潜行という印象なのですね。私もそうです。
          万事、ヒトがなしたことですからガビチョウを責められないですが・・・。
          同じように、大陸から持ち込まれた「コジュケイ」についてはどうでしょう。
          これは、このところかなり急に数を減らしつつある、というのが私の印象です。

          1. コジュケイの声が聞ける場所は、奥まってきているという話でした。数の増減についてはピンと来ないとのことですが、今年は害獣が多く、また、山菜採りに入りに来る人が増えていることも原因ではないかと言っていました。

          2. なるほど。数の増減は分からないけれども、声は少なくなってるということですね。
            コジュケイは、よくよく見ると、とてもきれいで、ヤマドリより小さく、ハトよりも大きいといった特異な鳥なので気になっているのです。
            気を付けて観ることにします。

            ありがとうございました。

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