渓流の鞍馬天狗 セグロセキレイ Ⅱ

日本固有種

日本の水辺でよく見られるセキレイには3種類があり、個体の多さから並べると、ハクセキレイ、キセキレイ、セグロセキレイとなります。
その特性などについては、同じカテゴリーの他の記事を見ていただければ参考になるだろうと思います。

セグロセキレイは、セグロ(背黒)と付けられているように全体に黒っぽいのですが、眼の上と喉を残してしっかりと黒い頭巾をかぶったように見えるので、私は「快傑黒頭巾」あるいは「鞍馬天狗」というあだ名をつけています。

この端正な小鳥は、アオゲラ、ヤマドリ、キジなどと並んで日本固有種なのですが、残念なことに、このところ生息地域を減らしつつあるということです。

人なつこい

セキレイはどの種も、驚かさなければどんどんとこちらに近づいてくることが多いように思います。どれも人なつこいのでしょう。
一羽のセグロセキレイが、あるところでこちらに気付いたものの、その場にとどまってしきりにこちらを観察しているといったところを動画に撮りました。

セグロセキレイ 舞う

セキレイは飛んでいる羽虫などを捕らえるのが得意です。
水面から顔を出している石の上に待っていて、飛んでいる獲物を見付けるとひらりと一閃・・・、単発のジャンプを繰り返すのが普通ですが、獲物の種類や数や天候によっては、空中で連続してハントすることもあります。
ヘリコプターのように一点にホバリングするというのとは違います。あちらこちらに出没する獲物を捕らえられるように、主翼の風切羽と尾羽を巧みに連動させて前後左右上下と自在に舞います。
それにも一定のリズムがあって、まるで大気を舞台にしたバレーを見るようです。

これは凄い能力だと思うのです。
ちょっと考えてみますと、鳥が空中で獲物を捕らえるやり方には幾つかのパターンがあります。
一撃急襲型
鳥のうちでも猛禽に分類にされている一群は高みから獲物を定めて急襲します。一撃で取り逃がしてしまった獲物を再び狙うことがありますが、離れてしまったところで旋回し、体勢を立て直して再び襲い掛かるというパターンを繰り返します。獲物が大きいせいもあるのでしょうが、おおぶりです。
ホバリング型
チョウゲンボウ、ノスリ、ミサゴ、カワセミなどは、ホバリング(停飛)することがあります。
正確に云えば空中で獲物を捕らえるわけではないのですが、地面や水面下で動く獲物を捕らえるために必殺のタイミングを空中で計っているのです。ホバリングするためには格別なエネルギーを消費するところ、それに見合う効率を挙げているわけで、これも見事です。
捕虫網型
私は見たことがありませんが、ヨタカ(夜鷹)が有名です。

ネコのような髭のある大きな口を開けて夜を飛翔し、口に入ってきた虫たちを主食にしているそうです。あてずっぽうに飛び回るだけで?・・・口の周りに長い髭が生えているそうで、これが感度の鋭いアンテナになってるのかな?
カバシラ(蚊柱)が立つという現象があるので、そうしたところを突き抜けるだけで相当のものが得られるのかも知れません。海のシロナガスクジラが口の中にオキアミを取り入れる様子が連想されます。
乱舞型
とりあえず、ツバメとセキレイ。
ツバメも連続して空中の餌を捕らえて口の中に溜めることがあり、そのために自由自在に空を切り取ります。その飛跡は流麗な一筆書きのつながりになっていて、あわや失速と思わせるような屈折やブレーキングというものはありません。
一方のセキレイはまさに乱舞。空中に浮きながら跳ね飛ぶという感じで、風切り羽と尾羽の動きを最大限に組み合わせて、上下左右と緩急、自由自在に舞います。これに比べられるものは、奇妙なことですが、哺乳類に属するコウモリの超絶技術ほどしかないと思われます。

セグロセキレイの舞。「鞍馬天狗」の華麗な殺陣もかくありしか、というところでしょうか。

このところ数を減らしているという報告

日本のセキレイのうちでも、ハクセキレイは水辺から離れてもかなり離れても活動することができます。テニスコートや駐車場や公園といったところでセキレイらしい野鳥を見掛けたら、それはまずハクセキレイです。つまり適応力が高いのでしょう。
そうしたハクセキレイの勢いに押されるように、セグロセキレイの生息区域が減少しつつあるという報告が多くあります。
なんとか、棲み分けてもらいたいです。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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