追憶 下駄スケート・国道ボブスレー


スケートといえばスケート靴。金属の刃(ブレード)が丈夫な革靴に取り付けられているというのが当たり前、というよりも、今はそれしかありません。

が、明治時代の末に信州の諏訪湖で「下駄スケート」というものが発明され、長いあいだ山国の子供たちの冬の遊びのアイテムでした。私もお世話になった一人です。
図のように下駄の歯を払って、村や町の鍛冶屋が打った刃をネジ止めしたもの。
鼻緒に足を入れただけでは不安定なので、足首と下駄とを紐を回して固定しました。これが難しかったのです。昔の草鞋掛(わらじがけ)の要領ですが、きつく締めあげすぎると痛い上に血の巡りが悪くなり、ゆるすぎるとぐらぐらして立つのもおぼつかない。案配には慣れが必要でした。年下の子供たちの紐の調子に気を付けてみてやるのが、スケート遊びをする者の慣わしになっておりました。 “追憶 下駄スケート・国道ボブスレー” の続きを読む

雨型台風 洪水とその後


令和元年(2019)10月12日。想定を絶する甚大な被害。雨型台風19号がもたらしたもの・・・

それに前後した多摩川中流の河川敷の様子を並べてみると、自然の拍動の大きさが今さらながら身に迫ります。

洪水の前(2019年10月5日前後)

多摩川中流の右岸堤防からの上流方向と下流方向 平時の静かな流れ

一面のアレチウリ
この春からいきなり、河川敷はアレチウリに席捲されました。まるで雪崩を見るように、ススキ、アシ、ヨモギ、イタドリ、ノバラなどなどの上に被さって窒息させ、一面を一色一種に変えていったのです。

繁茂力が大きいために樹木の敵とされるクズと出会うと、両者のせめぎ合いがなされますが、勝ち目はアレチウリの方にあるようでした。

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ミツバチを巡るスズメバチとカマキリの腕比べ


刺されて死ぬ人が毎年20人前後に達することから、スズメバチは日本の野生生物では最も危険なものにランクされています。

スズメバチにも種類がありますが、毒の強さと攻撃の執拗さなどで、キイロスズメバチはオオスズメバチと並んで横綱級です。
先ず「キイロスズメバチ」に登場してもらっておきます。
全体に黄色味が強く印象され、しばしばオレンジがかって見えることから「アカバチ」とも呼ばれます。脚までも黄色であるところが、飛翔時の見分けに役立ちます。

カマキリ登場

ご存知「カマキリ」には、どうも滑稽なところがあります。私にはそう見えます。
翅を広げ、身を立て、前脚を鎌のように左右に構えて見得を切る姿は、どう見ても大真面目です。それを「蟷螂の斧」などと、自分の力量もわきまえずに強大な敵に挑む様子に見立てられて揶揄されるのは、気の毒なことです。
ヒトにとっては全く無害です。
虫の世界に分け入ってみれば無害どころではありません。「蟷螂の斧」はカギの付いた大きな鎌となり、それが電瞬に獲物を絡めて引き寄せ、おそろしい咢へと運びます。
カマキリは「鎌切」と表記されることがあります。
カマキリは果敢なハンターで、各種の昆虫は云うまでもなく、ミミズ、クモ、ヘビ、カエル、トカゲなどを、はては小型のコウモリや小鳥を捕食した例が報告されています。
小鳥などの場合、その頭に穴を開けて脳を食べるという物凄さですが、それが内に向かうとどうなるかというと、ひもじくなると共食いしあったり、交尾の後にメスがオスを食べてしまうという習性が10〜20%ほどに発揮されるということです。
オスを食べるとメスの産卵の量が2倍にもなるという観察があり(オスの持つ特殊なタンパク質のため)、してみれば、オスは種を多く残すために己の身を犠牲にしているわけで、いたましいのか崇高なのか分からなくなるような凄絶さです。 “ミツバチを巡るスズメバチとカマキリの腕比べ” の続きを読む

スズメバチ Ⅰ 「キイロスズメバチ」


スズメバチと言えば、日本では最も危険な野生動物として知られています。年間20人ほどが犠牲(アナフラキシーによる)になっており、これはマムシやハブなどの毒蛇や熊によるものよりも多いのです。

キイロスズメバチ

日本には3属17種類のスズメバチが棲息しており、わけても「オオスズメバチ」と「キイロスズメバチ」が横綱級とされています。
なかなか堂々とした飛行ぶり。上がオオスヅメバチ、下がキイロスズメバチ。
写真であると細部の違いが分かります(キイロスズメバチの方が背中の黒い部分が少なく、肩にも黄色な斑紋があり、脚も黄色)が、飛翔しているときは全体の印象で判別しなければなりません。
キイロスズメバチは黄色味が強く、光によってはオレンジ色に印象されます。それで私たち木曾谷の子供たちは、キイロスズメバチのことを「アカバチ」と呼んでいました。
アカバチことキイロスズメバチは獰猛さと毒の強さでオオスズメバチに引けを取らないばかりか、執拗さと適応力の大きさでは上を行っており、都市化した環境に食い込んで繁栄しています。ヒトが「あぶない」といって騒ぎになる相手は、おおかたキイロスズメバチです。 “スズメバチ Ⅰ 「キイロスズメバチ」” の続きを読む

ハウ マッチ 苦労性の幸せ


御下問

        
「これ、いくらだったと思う?」
そら、来た!
妻にしばしば問われることがある。
クリアランスセールとやらで求めたブラウスをかざしてのこともあるし、発泡スチロールにラップされたマグロのサクを取り出しながらのことだったりする。デパートもスーパーにも、特別なサービス・デイがあるのだそうである。  “ハウ マッチ 苦労性の幸せ” の続きを読む

限りなく ピンピンコロリ


みんなの願い ピンピンコロリ

寿命が延びるにつれ、いかに生きるかも大切ですが、いかに死んでゆくかということが大きな課題となりつつあります。誰にも避けられない課題です。
ピンピン活動していてコロリと逝きたいというのが、みんなの願いでありましょう。

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ハチドリのような蛾 「ホシホウジャク」


ホウジャク(蜂雀)」については一括して、カテゴリー「身近な生き物たち」の中で記事にしたことがあります。ホバリングしながら花に蜜を吸う蛾の一種です。

ホウジャクには「ホシホウジャク」「ヒメクロホウジャク」「ホシヒメホウジャク」などの種類があります。かなりマニヤックにならないと区別することはできないだろうと思われますが・・・。

いっそうハチドリのように見える 「ホシホウジャク」

何回かお目にかかったことはありますが、その度に、後翅の黒い部分の大きさと形から、「おそらくホシホウジャクだろう」と見当をつけた生き物が朝食を摂っているところです。
長いストローで蜜を吸い上げながら、上昇、下降、横滑り、ホップ・ステップ・ジャンプと、花から花へと華麗に舞うのですから、「ハチドリを見た」という騒ぎになるのも無理はありません。 “ハチドリのような蛾 「ホシホウジャク」” の続きを読む

空飛ぶエビ? 「オオスカシバ」


空飛ぶエビ?
 

まず、1枚のスナップ。奇妙な色をしたエビが空を飛んでいるように見えませんか?

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華麗なホバリング 「チョウゲンボウ」Ⅱ

ハヤブサとならんでインコの仲間

チョウゲンボウ」はハトほどの大きさの猛禽類です。
最近のDNA研究から、ワシやタカなどよりも、インコスズメに近い系統であることが分かってきたとのこと。
あの「ハヤブサ」も同じなのだそうです。ハヤブサといえば昔も今も、敏捷で精悍なものの代名詞のようになっています。昔々、高性能を誇った戦闘機「」。いま現在、宇宙で任務を遂行しつつある小惑星探査機「はやぶさⅡ号」といったとおりです。

ひらひらと舞い 華麗なホバリング

チョウゲンボウは、ハヤブサほど高速では飛翔しません。ひらひらという感じで飛び、しばしば華麗なホバリングを見せます。                 先端にアクセントのある尾羽を扇状にひろげて揺らいでいる様子は、地上の一定範囲をスキャンしているようにも見えます。齧歯類(ネズミなど)の尿が紫外線を反射して光るのを捉える能力があるのです。 “華麗なホバリング 「チョウゲンボウ」Ⅱ” の続きを読む

ひらひらと頼り無げ・・・? 「モンシロチョウ」


「モンシロチョウ」=「紋」「白蝶」

私は長いあいだ、「モンシロチョウ」を「モンシロ・チョウ」と思い込んで不思議に思っていました。「紋は黒いのに、どうしてモンシロというのだろう」というわけです。正しくは「モン・シロチョウ」。モン」の付いた「シロチョウ」のことだと分かったのは、つい最近のことです。

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