ハウ マッチ 苦労性の幸せ

御下問

        
「これ、いくらだったと思う?」
そら、来た!
妻にしばしば問われることがある。
クリアランスセールとやらで求めたブラウスをかざしてのこともあるし、発泡スチロールにラップされたマグロのサクを取り出しながらのことだったりする。デパートもスーパーにも、特別なサービス・デイがあるのだそうである。 

強要

どの季節、どこでどんな魚が獲れて、それはいくらぐらいで取引されるものか。私に分かるわけがない。知っているわけもない。
この夏の、歳を召したご婦人の服装のトレンドとかコンビネーションは・・・。
セールス品というものに、どのような仕組みで値札が付けられるものか・・・。
私には、そもそも、織物の素材についての知識というものがほとんどない。

けれど、「いくらしたと思う?」という問いには答えなければならない。この難題をクリアするのに失敗すると、妻が機嫌よく買い物に出掛けてくれるかどうか。意気込みに影響し、それは即、私が三度三度に食べられるものの質と味にかかわってくる。

案配

妻が支払った代価の1.3〜2.0倍ぐらいの範囲が、ほど良い加減のようだ。
支払った値段よりも低くては、もちろんいけない。
とんでもないことになる。

といって、5倍もの価格を言うと、「あなた、宇宙人? それとも、わたしを馬鹿にしてるの?」ということになる。最近は、「あなた、発達障害?」という言葉がしばしば発せられるようになった。
まさかの「宇宙人」と言われても笑っていられるが、「発達障害」と言われると、実のところ、笑ってはいられない。「そうした傾向をかなり疑える」と自分で思っていることがあるからである。いやな言葉が気軽に流行るようになった。

苦心

品物を興味を持って見るふりをしながら、考える。
要は、「きょうこのごろ、妻が多少の遊び心で手放す気になれる金銭はいくらほどか。『安物買いの銭失い』の憂き目をみたにしても、悔しさに耐えられる金額はどのぐらいか」ということである。
品物によって判断してはならない。あくまで妻の「こころづもり」を中心にして測る。

的中♪

不思議なことだが、これがおおよそに見当付けられることが多い。思い描いた額に三割方を増して答えると、まずは大事に発展せずにすむ。
「わたし、〇〇円でかったのよ!」
「そう、上手な買い物したね」
ということになる。めでたしめでたし!

予測 

妻は宝飾品には(あまり)興味がない。家具や敷物を移動させたり変えたりして、部屋の模様替えをすることは好きである。これ以上に家具を置く余地はないと私は思う。妻は狭い動線を縫うように行ったり来たりすることは嫌いではないので、「どうしても欲しい」という家具に出会うことがあるかもしれない。無理をするかもわからない。けっこうな買い物になるかもわからない。

そうした際、私は、御下問、強要、案配、苦心・・・を強いられるだろうか。
その心配は無用である。
そのような案件は、「〇〇円のものを〇〇円で買えたのよ」といきなりの託宣があるだけで終わるに決まっているからである。
めでたしめでたし?

ロウボウ

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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