数年前、フランスの上空8千メートルほどのところを飛行していたジェット旅客機が、突然、左翼のエンジンに異常を発したことがある。パイロットは最寄りの飛行場に緊急着陸を敢行して、あやうく大惨事をまぬがれた。
トラブルの原因は、一羽のヨーロッパ・コンドルであった。自分も、血と肉と羽毛で捏ね上げられた泥のようなものになってしまったが、ジェットエンジンのタービンの幾枚かを捻じ曲げて、回転をおおきく狂わせたのである。
高度8千mといえば、酸素濃度は平地の3分の1ほどになり、ヒトにとってはデスゾーンで、脳神経細胞はどんどん死滅してゆく。鳥類は肺臓の前後に気嚢という器官を備えており、吸うときも吐くときも、肺の中の空気の流れを一定の方向に保つことができる。死腔というものが無い。呼吸システムは哺乳類よりも明らかに勝っている。
それにしても、コンドルが何のために途方もない高空を飛翔していたのか、理由は誰にも分からない。 “あこがれ” の続きを読む
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。