一羽のカッコウのヒナが巣立ちをしました。ゆっくりと、ワシやタカに似たシルエットを見せつけてあたりの小鳥たちをすくませながら、お父さんとお母さんが待っていた木立まで達し、ふんわりと枝に降り立って胸を張りました。
誇らしく、幸せでした。けれどもそれは、白地にグレイの横縞の胴を立てた父親から、次のように告げられるまでの、ほんのわずかな間だけのことでした。
・・・お前はモズの巣の中に産み落とされた。卵からかえると、自分の背中を使ってモズのヒナどもを次々と放り出し、エサもなにも独り占めにして、この父と母にではなく、モズの夫婦に育てられた。あのしたり顔のモズの鼻をまたあかしてやったわ。われわれ一族がさずけられている生まれながらの知恵とはいえ、お前はよくやった・・・。
幼いカッコウの全身がいきなりぞっと毛羽立ち、大きくふるえだしました。そういえば、はるか闇の奥から這い上がってくる幻があったのです。 “カッコウと少年” の続きを読む
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。