ハチドリのような蛾 「ホウジャク」

チョウはヒラヒラ トンボはスイスイ?

 蝶は「ヒラヒラ飛ぶ」といわれ、トンボは「スイスイ飛ぶ」といわれます。たしかに「アゲハチョウ科」を代表として、チョウの多くはひらひらと飛びます。
 が、どこにも変わり者は居るもので、ヒラヒラどころか「ブンブン」と飛ぶチョウも居ります。例えば「セセリチョウ」は、頭大きく、胴太く、ずんぐりしています。羽ばたきも速く、ブンブンにふさわしく素早く飛行します。
 ヒラヒラ派の代表として「キアゲハ」に、ブンブン派の代表として「イチモンジセセリ」に登場してもらって写真を見てください。対照的な特徴が一目瞭然です。 “ハチドリのような蛾 「ホウジャク」” の続きを読む

必殺の妖しさ 女郎? 上臈? 「ジョロウグモ」

 「ジョロウグモ」は、住宅街の中のちょっとした公園にもよく見られる馴染みの深いクモです。秋が深まるにつれてメスがぷっくりと大きくなり、黄と緑と鮮紅色の取り合わせが妖しい迫力を放つようになりますから、初めて見てギョッとし、名前を知ると生涯忘れない人が少なくないだろうと思います。

獲物よ かかれ

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川に生きる 「コイ」

 いきなりですが、下の写真の正体は何だと思いますか?
 大洋の中で、息継ぎをしているクジラかシャチのように見えませんか。 “川に生きる 「コイ」” の続きを読む

メダカ

 数年前、メダカを十匹ほどいただいた。妻と親しくしているその家の奥さんは、水槽、睡蓮鉢、はては火鉢、発泡スチロールの箱などに水草を入れて、いたって無造作に飼っているように見えた。「増えすぎたから持ってってください」と言われる。半日陰ほどのところに放っておいて良いのだな、と思っていただいてきた。

   小さき目を据えて目高は居りにけり          高橋淡路女

 四・五日したら、小さな目で睨みあげ、「はやく水を換えてくれなきゃ困るじゃないか」と言われているような気がしだした。ならんで睨んでいる。 “メダカ” の続きを読む

遥かな・・・「ススキ」「ジバチ」「アシナガバチ」

ウマやヤギは冬眠をする動物ではないから、夏のうちに干草を作っておかなければなりません。たかだか三週間ほどの夏休みしか持たない山国の子どもたちにとってはつらい作業でしたが、末っ子の私は、身体の大きさからのハンデイもさりながら、左利きであったところから、さらに苦戦を強いられることになりました。

草刈のときは普通、何人かが縦に並び、おおよそ自分の持ち巾を決めて横に刈り進んでゆきます。右利きの人は、まず左手で草をひとにぎり掴み、右手の鎌で切り取ることを繰り返すから、左へ左へと移動することになります。並んで作業をするということは大切で、全体に一定のリズムが生まれて能率が保たれるのです。
私は左手に鎌を握るので、刈り進む方向が皆と逆になり、刈り場の反対側から独りで働かなくてはなりません。「草を除けたら、その下からドクロが睨み上げてきた」というのが、そのころ執拗に私を苦しめていた想像でしたから、ほとんどいつも半分ベソをかいているという始末でした。「無理もないことだ」と今は自分を慰めています。当時、私は小学校の低学年生でしたから・・・。
さらにもうひとつ。というものは右利き用に作られているものなので、右手に持って眺めてみると、刃はゆるく向こう側に膨らんでいるものです。これを左手に持ち替えるとカーブは逆になり、指に迫るようになります。おかげで何度も自分の手を削ってしまうことになりました。そのころ付けた切り傷のあとが、いまも右手のあちこちに残っております。それでなくとも、細かいノコギリの刃を巡らしたようなススキの葉のために、ひょっとしたはずみで、皮膚が意外に深く切れるものです。

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不思議な話・・・「アシナガバチ」

数年前のこと、久しぶりにアシナガバチに刺されました。
施設の倉庫の鉄の扉を吊っている枠に大きな巣をかまえていたのですが、めったに使われない鍵穴をガチャガチャさせ、扉をこちら側に引き開けたからたまりません。こそぎ落とされるようにして、拳ほどもある軽石のようなものが頭の上に降ってきたのです。金色の飛翔体がキラキラし、あという間に、顔を五箇所ばかり刺されてしまいました。

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動物園は冬! できれば雪の朝

動物園は夏のものだと、私たちは思い込みがちです。
ライオン、ゾウ、キリン、シマウマ、カバ、スイギュウ、サイ、バク、ペリカン、フラミンゴ、チンパンジー・・・。南の国々からのお客さんたちが、本来の野生を取り戻して、活き活きとしたところを見せてくれるだろうと期待しがちです。

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夢の・・・「木曽馬」

多摩動物園」には、冬に訪れるのがおすすめです。
寒さに強い動物たち、トラ、ユキヒョウ、オオカミなどが生き生きとしており、ことにオオカミたちが放たれている広場に正午きっかりに立つと、おりから動物園全体に流される音楽に呼応して、オオカミが揃って正座し、顎を中天に向け、遠吠えを繰り返すのを聞くことができます。どういうわけか、ひととき魂を揺さぶられます。
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ライギョと谷の少年

初夏。新聞の地方版に次のような記事が載せられたことがあります。終戦から10年も経っていないころの話で、私は小学六年生だでした。

      ダムで雷魚みつかる
  〔木曾福島〕〇〇電力株式会社黒川渡ダムは、このほど土砂の堆積を除くため    に放水をおこなった。水位の下がった底近くで、木曾福島町上町、○○昇さん(十八歳)が十八日午後、一匹の奇怪な魚を発見し二時間後に網に入れた。日暮れまであちこち持ちまわられたが、ようやく雷魚と判明して一件は落着。雷魚は大正年間に台湾から移入されたという肉食性の淡水魚であるが、高い堰堤を乗り越えてダムに侵入し、このような高地で棲息していることが不思議がられている。

古いダム

「黒川渡ダム」という響きからは、「黒四ダム」とも「佐久間ダム」とも肩を並べられるような威風を感じます。規模は、はるかな後輩たちの数万分の一にすぎないけれど、技術の蓄積のために役立ったたくさんの古い人造湖のひとつには違いありません。それだけに場所を選り抜かれており、黒川渡ダムはあたかも、太古からそこにある沼のようなたたずまいを醸し上げていました。

雷魚! 肉食性だというから、コイやフナ、マスやヤマメやイワナなどを襲うのだろう。獲物が足らないときには、水没している家々の墓跡などを取り巻いてあばき、人骨をしゃぶるに違いない。そんなことをしながらも、たえず水面をうかがっており、ひょんなことで人間の子どもでもばちゃばちゃやっていないでもあるまいと、辛抱づよく待っている。
空にいる雷神とのつながりもあるであろう。電光がすさまじく飛び交い、雷鳴が谷のあいだを轟きわたるときには、いそいそと水面まで浮上してくる。ずるずるした皮膚を霊気にわななかせながら、恍惚と腹を裏返して漂うさまが目に浮かぶようでした。
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