水無様 愛嬌たっぷりな女神様のお話

 信州木曽町の氏神は女神様で「水無様」と呼ばれております。
 木曾川に沿って並んでいる家々から急な坂を登って山に入り、さらに北に向かって開かれている山道を行くと、杉や檜の巨木がうっそうと繁った鎮守の森があります。二頭の狛犬と、落し水にいつも濡れながら爪の中に硬玉をかかげている竜を門番にして、女神様はここに住んでおられます。霊気に満ちた結構なお住まいを「水無神社」といいます。

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切れ易いヒト+車+高速=移動地獄

1馬力

 少年だった頃、私は兄たちと一緒に1頭の馬を飼わされたことがある。敗戦後の食糧難を乗り越えるためには、子供たちを一丸として農作業に当たらしめるのが上策であるとう父の思い付きからである。
 この馬がひとたび暴れ出すと、私たちには命がけであった。騎乗しているときに暴れられたら、一緒に砕ける覚悟で屏風のように立ちふさがっている崖に向えと教えられた。1馬力でさえこれである。
 馬と自動車については、「人の正体」というカテゴリーの中で「大きな異常に何時しか流されて・・・」という記事に書いたことがあるけれど・・・

60馬力

 この頃の軽自動車60馬力ほどのエンジンを搭載している。ハンドルの前に60頭の馬が黒々と密集して自分を牽引している光景を想像する。馬蹄の響きや汗の臭いだけでも怖ろしい。策具で繋がれた60頭の馬が学童の列に暴れ込んだとする。たくさんの子供たちが犠牲になるのは当たり前であろう。 “切れ易いヒト+車+高速=移動地獄” の続きを読む

空に心を遊ばせる

野鳥を観察しようとしていると上に視線が向くことが多くなり、たとえば、はるか上空を行く旅客機などはうっとうしく感じるほど頻繁に目に入って来るものです。雲がそれよりも多くなるのは言うまでもありません。
不定形のものを見たとき「何かに似ているのでは?」という思いが湧くのは、私たちの本能ではないかと思うことがあります。ヒトの正体の一つは、物事の共通点を探し出しては分類したり意味づけをしたりすることでしょうから。

それこそ「そっくりさん」の雲がウェブ上のサイトなどに載せられていることがあります。ところがたとえば、火炎を噴き上げている「ゴジラ」の姿そのものに盛り上がっている入道雲などを見ると「え、ほんと、どうして」とちょっと引いてしまいたくなるのは、私だけではないだろうと思います。これまで学習してきている雲という概念とゴジラという概念(?)が、こんなふうに繋がっていいものかと不安(?)になるからだろうと思います。 “空に心を遊ばせる” の続きを読む

Z旗と私のX旗

 最近、かつてヨットに親しんだという一人の老人がエッセイに書いていた。大型台風が近づくと、自作の「Z旗」を自作のポールに掲げ、家を点検し、そこかしこを固縛して回るという。Z(後がない)にあやかって、もうひとつ踏ん張ろうというのであろう。
 あの東郷平八郎提督の檄は、いまもなお、広く人々にやる気を吹き込んでいるのだなと思った。そういえば「ふうてんの寅さん」も「・・・いつかお前も喜ぶような 偉い兄貴になりたくて 奮励努力の甲斐もなく…」と歌っている。 “Z旗と私のX旗” の続きを読む

頭が高いのではありません 「カシラダカ」

 頭が高いのではありません。気が張ると冠羽が三角に立ち上がるのです。それで「カシラダカ」。

お初にお目にかかります 緊張すると毛がつっと立つのです

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ご一緒しましょ エナガ・シジュウカラ・コゲラの混群

 生物の中には、種類の違うもの同士が混じり合って行動することがあり、「混群」と呼ばれています。
 野鳥にもしばしば観られ、私になじみ深いのは、「エナガ・シジュウカラ・コゲラ+α」の混群です。ヤマガラやメジロが加わることがあるのをαで示しています。ああ、「カワウ・ダイサギ・アオサギ・コサギ+α」というのもおなじみなものでした。このときのαというのはカラスです。
 ここでは先ず、小鳥たちの混群について観ることにします。

危険を感知する能力を上げるために

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このところ失地回復中か 「オナガ」

 「オナガ」は全長40㎝近くありますが、名前の由来の通り、尾がたいそう長いので、身体だけの大きさはムクドリぐらいです。
 頭に黒いスイミングキャップを被っているように見えるほかは、全体にくすんだ水色に印象され、尾をなびかせるようにして枝を縫って飛ぶ様子はスマートで舞うように感じられ、ほかの野鳥との区別は容易です。
 スマートさに似合わず「ギューィ ゲーイ ギー」などと鳴きかわすので、姿とはちぐはぐな感じがしますが、声からも察しられるように、カラスの親戚なのです。

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残り柿に来る鳥たち

 今年、平成最後の秋はの実りに恵まれました。全国的にそうであったかは分かりませんが、東京都多摩地方では、誰に尋ねてもそのとおりだとのことでした。
 取り残された柿や、あるいはまったく手も付けられなかった柿が、そこかしこに目立ちました。そういう柿を勝手ながら、「残り柿」と呼ぶことにしました。
 里山に集まる野鳥たち、果物を好む鳥たちは殊に、晩秋まで楽しむことができたはずです。

あかあかと柿の実照らす夕日かな
へだてなく野鳥を呼んで残り柿
ヒヨドリの主人顔なれ残り柿

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みんなでグルグル 食事の時間 「ハシビロガモ」Ⅰ

 漢字では「嘴広鴨」、英語では「shoveler」。そのとおり、クチバシが長くてシャベルのように広がっていることから「ハシビロガモ」と呼ばれるようになりました。
 50㎝ほどの大きさでマガモよりもいくらか小型。雑食性で、プランクトン、昆虫、種子、魚などを広く食べるために、けっこうに淀んで栄養の良すぎるような都会の池にも飛来し、東京都区内でも、新宿御苑や皇居の濠などで見られます。

カモのなかでも色目の美しい鳥

 てんでに横並びしているところを見てみましょう。オスは頭から頸にかけて光沢のある深い緑色、クチバシは黒く、胸から腹は白、脇腹は赤味のある茶色で、羽を広げるとさらに鮮やかなエメラルド色が目に付きます。 “みんなでグルグル 食事の時間 「ハシビロガモ」Ⅰ” の続きを読む

この国の行方 分岐点までのタイムリミット7~9年 Ⅰ 「沈みゆく船」 本当ですか

「沈みゆく船」 本当ですか 

 2018年(平成30年)12月30日の朝刊から年をまたいで9回。朝日新聞は「エイジング・ニッポン」という特集を連載した。
 「去り行く人 死んでゆく島」「沈みゆく船から流失する頭脳」「少子高齢化と人口減少の崖を世界一のペースで転がり落ちる」「私たちの持続可能性」「長い老後 年金だけでは」「民主主義にも影 次代に重荷」「伝統的価値観に生きづらさ」「生産年齢人口はピーク時の6割に」「日本の経済成長 若年層ほど悲観的」・・・といった見出が続く。やりきれなくなる。
 滑り止めとなるようなさまざまな動きももちろん取り上げられている。外国からの働き手の導入ロボットでの労働代替女性の社会進出地域の活性化に尽力する人々のレポート幸せということの再考、といったふうであるが、たとえば現在、地域活性のために積極的に動いている人の感想が「・・・町の寂れを感じてはいても、何も考えていない人が9割以上いる」であり、あれやこれやの特集のおわりの方に示してあるグラフィックは、下にスキャンしてあるとおり「経済の中心は人口が増える新興国に移る」というもので、日本は「G20で最下位になるとなる見通し」というのが結論のように印象される。

 これは本当なのだろうか。本当だとしたら私たちは今何をすべきだろうか。8回ほどに分けて考えてみたい。