アメリカは癌に変身しつつあるのか

 2017(平成29)年12月、筆者は「ヒトの正体」というカテゴリーに「アメリカはどうして銃の規制ができないのか」「狂気の核」という二つの記事を書き、現職アメリカ大統領は、「巨大水爆」を凌駕するような衝撃を、わずか「140語のツイート」で続けざまに世界に発信することを発見(発明?)してしまった「自己愛性人格障害者」ではあるまいかとした。ドナルド・トランプ第45代アメリカ合衆国大統領が就任してから、およそ10ヶ月後のことであった。

 その後すでに、アメリカの精神科医たちが結成している「警告義務の会」が、トランプ大統領を「悪性自己愛性人格障害」と診断して警告を発信していることを知った。
「自己愛性人格障害」というのは、「自分は特別な存在であり、周囲は自分を崇拝し、自分に尽くすためにある」という一方的で強固な構えであるが、その前に付けられた悪性(malignant)とは通常、性質の悪い腫瘍つまりのことを指すもので、「アメリカの医者は思い切ったことを言う」と感じたものであった。
自己愛性人格の特性が大国一国の規模まで拡大すると、「アメリカは特別な存在であるから、世界はアメリカを崇拝し、尽くすためにある」ということになる。

 それからまた1年ほどが経って、トランプ政権は2年目を終えようとしているが、その間にアメリカがしたことには驚かされてしまう。

  TPPから離脱
  対移民強硬策
  UNICEFから脱退
  パリ協定から脱退
  米露戦略核兵器削減条約の破棄
  核兵器開発路線の再開
  対中国貿易戦争の開始・拡大
  北米自由貿易協定の見直しをメキシコ・カナダに強要
  中東イスラム諸国軽視
  対日本・二国間貿易協定の締結を強要

 国際間ルールという、現生人類が戦争の繰り返しでやっと学んだ成果。これを力ずくで跳ねのけて押し通している。
 これらを貫いて「アメリカファースト」「白人至上主義」とやらの信念があり、「俺とあいつ」「俺たちとあいつら」という敵対感情があるらしいから、さらに驚いてしまう。被害妄想的ですらある。
 前のブログにも記したとおり、これでは銃の規制などができるわけがない。つい先日、ユダヤ人協会で自動ライフルが乱射されて多くの死者が出たが、トランプ大統領は「教会が武装していれば、こういうことにはならなかっただろう」と云ったという。
 教会は人々が平和を分かち合う場所である。教会や寺院に銃をつかんで集まることを要求する宗教があったとしたら、それは礼拝ではなく、テロリストの打ち合わせ会の類であるだろう。

 世論調査によると、「アメリカファースト」に基づく諸政策は、底堅い支持を保っているそうである。宇宙船地球号を守るために策定された国際間の環境のための規制というタガを外したから、アメリカの経済活動は湧いて好景気が続き、雇用人口が増し、失業率が低下しているという。一定の有権者から指示を得るのはあたりまえである。
 半分の支持者半分の批判者。そして全米の富の35%をブラックホールのように吸い込み続けている1%の富豪たちがいる。トランプ大統領は、はたしてどの階層の味方であるだろう。
 とまれ、一定の支持者を繋ぎとめて政権基盤を守るために、なりふり構わずの自己拡大政策は、これからしばらくは続けられることになる。

 このバランスゲームの代価は大きい。
 というものの正体を考えてみる。身体の一部が全体の調和を無視して暴走を始めるのがというものである。自分の宿主をしゃぶり尽くした瞬間に自分も滅亡するというシチュエーションに居ながら、なお増殖に拍車を掛け続けるところがの凄さと言えよう。
 大国アメリカは、地球という惑星の癌的存在になりつつある。この年(2018)の国連総会で、アメリカ大統領が政策を誇る演説をなした時に、会場に居た各国の首脳たちは失笑した。
 アメリカは国際社会での指導力を急速に失いつつある。発言力を失った分を、軍事力の増強で補おうとするかのようである。脅しの外交を展開しようとする。自分だけが太り続けて繁栄を誇れば誇るほど、この惑星を道連れにして破滅する時期を早めてしまうという悪循環に囚われつつある。指導者どころではない。
 沈みつつある大国アメリカ。哀れで痛々しいとさえ映るまでになってしまった。先人が営々と築いてきた人権と民主主義の後退を見るのは切ない。

 癌に対しては丸ごと切り取ってしまうという治療手段があるけれども、アメリカを切除するわけにはゆかない。
 周囲への侵襲を少しでも軽くするために、アメリカには鎖国を選択して欲しいと願うこの頃である。

 問題の本質は「考えられないような冨の偏在」にあることにアメリカの有権者たちは気付いてほしい。1%の人が全米の富の35%を収得しているという。さらには、世界で最も富裕な8人(うち6人がアメリカ人)の資産が、世界人口のうち下位50%(約36億人)の資産の合計額とほぼ同じであるという報告がある。
冨は必ず権力と結び付く。問題は私たち自身のものであることを呼び掛けている。
明日、2018年11月6日に中間選挙が為されるという。

 

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です