小林一茶 光と影


思い出の学芸会

 〽信州信濃の雪解けてぇ…

 或る春の日曜日。目を覚ますと、妻が朝食の支度をしながら鼻歌を歌っているらしいのです。珍しいことでした。
 私は信州は木曽谷の生まれ、つまり木曽の山猿。一方、妻の故郷は伊豆。
 その妻が「シンシュウシナノ」とはどういうこと?・・・パジャマのままで台所に行って訊ねてみました。
「信州信濃がどうしたって?」
「あれ、聞こえてたんだぁ」
 妻ははにかみました。
小学校2年生の終わりの学芸会で「一茶と子供」という出し物があり、その主役「一茶」を務めたことがあるということでした・・・

 こんなふうに書き始めると、なんだか新婚間もない夫婦のほほえましくも平和な朝のひとときといった風に感じられるかも知れませんが、どっこい、私たちは共に80歳を超えている古手も古手の夫婦。
けれど、〽信州信濃の雪解けてぇ…という歌のことは本当です。

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