巣箱からの子育て 「シジュウカラ・・・2」

その春も、巣箱の中にヒナたちが孵ったとみえて、シジュウカラの親たちの動きはウナギノボリにあわただしくなりました。
いれかわりたちかわりに虫を運んできて、立ち去るときには、ヒナたちの出した白い糞をくわえて飛び出してゆきます。外敵に察知されないように、糞は巣からじゅうぶんに離れたところで捨てられるのです。

私が近くをうろつくことがあると、「ジッジッジッジッ」とけっこう凄みの効いた声をだします。私を威嚇し、ヒナたちには「静かにしていなさい!」と警告しているのでしょう。

わずか1日の違い 身体も好奇心も

ヒナたちの成長ぶりは物凄いものです。その日、ヒナたちは底に重なり合って息をつめ、親の警報によく従ってぴくりとも動かず、まるで一枚のビロード苔のように見えました。ところが、次の日には身体もひとまわり大きくなっていて羽毛も増え、親の警告もそっちのけで、好奇心いっぱいです。

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格子ばんてん 粋な若衆  「コゲラ」

日本に棲む「キツツキ(ケラ)」には、コゲラ、アオゲラ、アカゲラ、ヤマゲラ、クマゲラ・・・などがありますが、その中でも「コゲラ」はいちばん小型で、スズメほどの大きさの小鳥です。挨拶してもらいます。

はやく見ときな 行っちゃうよ

小さいだけに機敏で、木の幹をクルリと廻ったかとおもうとピョンと次の枝に移る様子は、孔子柄のハンテンをまとった江戸の火消しの若者が、ハシゴ乗りの芸をしているようにに見えます。
腹と背中をそれぞれ見てみましょう。
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名前の由来は・・・「番」?「晩」? 「オオバン」

真冬のあさまだき、東天が紅く輝き始めるころに多摩川のへりに立ちますと、まだネオンや街燈の色を映してちらちらしている水面に、なにやら生き物が居る気配がしました。
何だろうと怪しみながら撮ったものがこれです。原版のままだとほとんど何も見えませんから、明るさを増して示すように調整したものです。

しだいに明るくなってきますと・・・ “名前の由来は・・・「番」?「晩」? 「オオバン」” の続きを読む

「鳶が鷹を産んだ」は不公平な比較 「トビ」

トビ」は誰にもおなじみの猛禽類です。タカ目タカ科に属し、体長60cm、翼長160㎝ほどにも達する大型の鳥です。
杭などに止まっている姿は濃い褐色のかたまりに見えますが、大気に乗って滑空しているトビを下から見上げると、羽に白色の斑が微妙に散らされていて、なかなか渋いものがあります。挨拶してもらいましょう。

真上を失礼! 驚かしたかな

「トンビにアブラゲさらわれた」のとおり雑食性であり、主に動物の死骸や生もの(残飯)を食べるので、狩猟一本で生きる他の勇猛なワシタカ類に比べて一段落ちるという印象があるようです。それで「鳶が鷹を産んだ」という言い回しが生まれたのでしょうが、はたしてこれは妥当なのでしょうか。 “「鳶が鷹を産んだ」は不公平な比較 「トビ」” の続きを読む

空飛ぶ子ネズミのように見えながら・・・ 「セッカ」

長めの尾を入れても12㎝といいますから、スズメよりも一回り小さな小鳥です。小さな体が、淡い褐色の下地に黒褐色のまだら模様という地味な装いをしているので、ススキの茎に止まって朝風に羽根が逆立っている様子などは、いよいよ心細く見えます。

よくとおる澄んだ声で「ヒッ ヒッ ヒッ」と鳴きながら上昇し、「ジャ ジャ ジャ」とすこし濁った声で下降します。小刻みに羽根を動かしていますが、その割に、空気をつかんで飛翔するという感じではなく、おおぎょうに言うと、溺れているという印象を受けるほどです。 “空飛ぶ子ネズミのように見えながら・・・ 「セッカ」” の続きを読む

「カッコウ」をめぐる「オナガ」「モズ」「ホオジロ」の物語

生命の種のありようの変化、つまり「進化」というものは意外に速く進行することがあり、ともすると私たちの身近に目のあたりにするチャンスすらありそうなのです。

1 話は「遺伝か環境か」というところから始まる
2 「カッコウ」の登場
3 「オナガ」の登場
4 「オナガ」の防衛
5 「オナガ」復帰の兆し
6 まとめ

1 話は「遺伝か環境か」というところから始まる

両親から受け継いだ遺伝子の配列そのものは生涯を通して不変であると考えられます。ところが、例えば一卵性双生児は互いに全く同じ遺伝子情報を持っているのですから、一方が統合失調症を発症したら相方も100%発病するかというと、これがそうではないのです。50%ほどは発病しないという事実がかなり前から知られています。
遺伝子が生物を規定する力は強大であるけれども、必ずしも運命を決定するものではなく、環境が作用するところも大きいことを示しています。
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イギリスやロシアでも・・・スプーン おたま  「エナガ」

春先のある日、里山で薪割りの作業をしていると、ことさら小さな小鳥が近くの古木の根元に来ては、しきりに何かをついばんで行くのに気付きました。巣の材料を集めていたのです。「エナガ」という小鳥をそのとき教えられました。挨拶してもらいます。

ちょっと恥ずかしいかな・・・エナガです

ふわふわしてマシュマロが飛び回っているようです。体長は14cmほどありますが、半分は長い尾が占めているので、体重はわずか8gばかり。同じぐらいの体長を持つスズメが24gあるので、その軽さ加減が分かります。 “イギリスやロシアでも・・・スプーン おたま  「エナガ」” の続きを読む

春の河原の・・・「カワラヒワ」

春も本番となると、多摩川の河川敷はその中洲までが、いちめん黄色の花で埋めつくされる所が少なくありません。アブラナが野生化したもので、「セイヨウアブラナ」と「セイヨウカラシナ」が群落をつくって場所を取り合っているようです。
その花が終わりに近づいて実に代わるころは、「カワラヒワ」たちにとっては楽園でありましょう。

春のうららの・・・もういくつ寝ると食べごろかな

4月中頃の写真です。止まっているけっこう丈夫そうな草を見てみます。葉が茎を巻くようにして付いているのがセイヨウアブラナ、茎を巻かずにすんなり葉が出ているのがセイヨウカラシナ。するとこれはセイヨウカラシナであることが分かります。この2種類が競いあっているわです。 “春の河原の・・・「カワラヒワ」” の続きを読む

おめめぱっちり お風呂好き 「メジロ」

四季を通して私たちの身近にいてくれる、この愛らしい小鳥については、いまさら紹介するまでもないほどです。
姿や色はウグイスによく似ていますが、ウグイスはあの響きの良い大声のわりにはシャイで、ほとんど一匹でヤブの中を気ぜわしく移動しますから、まず人目に付くことがありません。向こうからはこちらがよく見えているのでしょう。用心深いのです。それに比べてメジロは・・・まず、あいさつしてもらいます。

イヌカキ上手でしょ!メジロでーす!

普段とはちょっと違うところを見てもらいます。 “おめめぱっちり お風呂好き 「メジロ」” の続きを読む

私の幻の鳥 「コジュケイ」

 昭和50年(19759)の頃、私は東京都府中市にある少年矯正施設に関係しておりました。東京はアメーバのように近郊へ近郊へと侵食を続けていましたが、矯正施設は塀に囲まれていますからスポットのように小さな自然が残されておりました。
その雑木林と果樹園との間で、これまで見たことのない中型の野鳥に出会ったのです。山国育ちの私が知っている「ヤマドリ」や「キジ」よりも小さく、尾も短く、全体にガッシリした感じの美しい鳥でした。ところが、それからはとんと姿を見せません。「幻の鳥・・・ご存知の方はお知らせください」というあやふやなスケッチ入りの手配書を事務所に張り出したものでしたが
、情報は一つもありませんでした。
何年も何年もたってから、ようやく再会し、「コジュケイ」という鳥だと知れました。・・・挨拶してもらいます。

幻?まさか でも、あまり見られたくないです

背面は銀色がかった下地に赤みを帯びた褐色の斑。前面は、首に銀色のスカーフ、胸から腹は薄いオレンジ色の下地に黒い斑点。なかなかに渋くて美しい鳥です。目も大きく目立ちます。

 大正年間に中国の南部から日本に移入されたものだそうですが、大陸から来たわりには、鳴き声は轟き渡るほどに大きいのに、いたって用心深く、なかなか姿を見せません。「ピック グイ ピック グイ」と鳴くのを日本では「ちょっと 来い
ちょっと 来い」と聞きなしていますが、「お前の方から出てこい」とじれったがる人がいるほどです。
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