「鳶が鷹を産んだ」は不公平な比較 「トビ」

トビ」は誰にもおなじみの猛禽類です。タカ目タカ科に属し、体長60cm、翼長160㎝ほどにも達する大型の鳥です。
杭などに止まっている姿は濃い褐色のかたまりに見えますが、大気に乗って滑空しているトビを下から見上げると、羽に白色の斑が微妙に散らされていて、なかなか渋いものがあります。挨拶してもらいましょう。

真上を失礼! 驚かしたかな

「トンビにアブラゲさらわれた」のとおり雑食性であり、主に動物の死骸や生もの(残飯)を食べるので、狩猟一本で生きる他の勇猛なワシタカ類に比べて一段落ちるという印象があるようです。それで「鳶が鷹を産んだ」という言い回しが生まれたのでしょうが、はたしてこれは妥当なのでしょうか。

自由自在に大気に乗る

   トンビ
とべとべ トンビ 空高く
鳴け鳴け トンビ 青空に
ピンヨロー ピンヨロー
楽し気に 輪を描いて

唱歌にあるとおり、上昇気流を巧みにつかんで舞うありさまは完全に大気を友としており、これまでの技量に太刀打ちできるのは、コンドルアルバトロスぐらいのものでありましょう。コンドルはトビと同じようにできるだけ広い範囲から死んだ動物を探すために、アルバトロスは羽を休める所のない大洋を何千キロも旅するために、特異な進化を遂げているのです。

優れた視力

タカ科の鳥は視力に優れており、視細胞が片眼150万個ほども備わっているということです。ヒトの視細胞は20万個とされていますから解像力の差は8倍ばかりにもなります。とりわけトビの視力はさらに優れているだろうと、私は推測します。
動くものを短期決戦で追い詰める他のタカたちと違って、トビは動かない小さなものを探さなければなりません。効率を上げるためには、高度と視力が必要となるからです。

私は、1円玉を伸ばしたアルミホイルに張り付けて、どのくらいの距離まで1円玉が識別できるかを知ろうとしました。5mほどが限度で、それ以上離れると、銀色の1円玉はアルミ板に溶け込んでしまって識別できませんでした。
低めに見積もっても、トビは40m離れても1円玉を銀色の背景から識別できると思われます
。砂浜に打ち上げられたイワシの死骸というコントラストがあれば、何百メートルという高さから識別できるのでしょう。

カラスがトビを目の敵にするわけ

トビもカラスも雑食性で、食性が似ていることから互いに競合することになります。
けれど、カラスはヒトの生活の脇まで近づいており、ヒトの出す「生ゴミ袋
を食い散らかすというレベルですが、トビはそこまでヒトに近づこうとしません日頃の食べ物をめぐる争いは、それほど深刻ではないと思われます

上のショットは、トビとカラスが向き合いになって争っているところです。大きさばかりではなく、カラスの尾羽はシャモジ型、トビのそれはシャミセンのバチ型であることから判別できます。
カラスがトビを敵のように警戒する理由は、トビの並外れた視力のためだろうと思われるのです

カラスのな営巣はかなり雑で、高木の上の方でな
されることが多く、トビの識別能力からすれば、巣の中のヒナたちを高高度から見付けられる率はそう低くはなさそうです。カラスにとっては何よりも怖ろしいことちがいありません。

飛翔のしかた、視力、食性・・・一つの間隙で生き延びるためにトビという種が得てきた進化の絶妙なバランスであって、どんな生き物についても同じことですが、見事としか言いようがありません。「鳶が鷹を産んだ」などと差別されることがあるのは気の毒です

 

 

ロウボウ

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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