御馳走を探す小鳥たち…キュート派1 エナガ

小枝を渡ってゆく綿毛

白っぽい綿毛のかたまりのようなものに、鉛筆の芯ほどのクチバシをチョンと付けて…群れのそれぞれが小首をかしげ、羽を一閃させては、あちらと思えばもうこちら、「チュリリ・ジュリ・チュリリ〜」とつぶやきながら、それぞれに忙しげに枝から枝を飛び移ってゆく……かわいいのです。

体長13.5㎝というからスズメと同じほどの大きさなのですが、重さはスズメの24gに対して8gという3分の1の軽さ。8グラムといえば、一円玉8枚ほど!
綿毛のかたまりから突き出している尻尾の長さが体長の半分を超える7.5㎝もあって、これが小さなヒシャクに付いている長い柄のように見えることから「エナガ」……軽いわけです。 “御馳走を探す小鳥たち…キュート派1 エナガ” の続きを読む

とことん地味ずくめ タヒバリ Ⅱ

タヒバリはセキレイの親類

姿と動作にそれが現われています。
セキレイと同じように、シルエットがスマートで、腰と尾をリズミカルに上下させ、飛ぶときは波を打つような飛跡を残します。

けれど、セキレイたちがどれもすっきりと色分けして装っているのに、タヒバリは徹底して地味づくりです。

そもそも「田雲雀」という名前は、「ヒバリに似た小鳥だがよく田んぼで見られる」ということから付けられているのです。

水辺だけに頼らず、野原や田畑でも安心して動きまわれるようにカモフラージュに専念したので、だんだんに同じような場所に住むヒバリなどに姿が近づき、セキレイからは離れていったのかも知れません。 “とことん地味ずくめ タヒバリ Ⅱ” の続きを読む

渓流の若衆 ハクセキレイ Ⅱ

渓流の若衆

日本の水辺によく見られるセキレイには、キセキレイ、セグロセキレイ、ハクセキレイの3種があります。全体をちょっと見の印象がそれぞれ、黄、黒、白であることからの上手な呼び方で、写真のように見分けは容易です。

どれも流麗な小鳥たちですが、キセキレイには「渓流の貴婦人」と呼ばれるにふさわしい落ち着いた雰囲気があり、セグロセキレイには「渓流の鞍馬天狗」と呼ばれても良いような押し出しがあります。
三番手のハクセキレイは他の2種よりもわずかに小さく、白と黒の羽色の振り分けにも個体によるバリエーションがかなりあるようです。水辺をけっこうに離れた場所でも尾を上下に振りながら盛んに活動しているので、私はハクセキレイを「渓流の若衆」と呼んでいます。

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渓流の鞍馬天狗 セグロセキレイ Ⅱ

日本固有種

日本の水辺でよく見られるセキレイには3種類があり、個体の多さから並べると、ハクセキレイ、キセキレイ、セグロセキレイとなります。
その特性などについては、同じカテゴリーの他の記事を見ていただければ参考になるだろうと思います。

セグロセキレイは、セグロ(背黒)と付けられているように全体に黒っぽいのですが、眼の上と喉を残してしっかりと黒い頭巾をかぶったように見えるので、私は「快傑黒頭巾」あるいは「鞍馬天狗」というあだ名をつけています。

この端正な小鳥は、アオゲラ、ヤマドリ、キジなどと並んで日本固有種なのですが、残念なことに、このところ生息地域を減らしつつあるということです。 “渓流の鞍馬天狗 セグロセキレイ Ⅱ” の続きを読む

渓流の貴婦人 キセキレイ Ⅱ

渓流の揃い踏み

多摩川の河川敷では3種類のセキレイがよく見られます。どれも、私が大好きな小鳥たちなので、それぞれに、私なりのあだ名を付けています。

 キセキレイ(黄鶺鴒): 渓流の貴婦人  
 セグロセキレイ(背黒鶺鴒): 渓流の鞍馬天狗
 ハクセキレイ(白鶺鴒): 渓流の若衆

どれも、スズメよりも少し大き目な身体に尾が長くてスマート。尾をリズミカルに上下に振りながら歩き、大きく波状の飛跡を残しながら飛びます。

互いの見分けは難しくありません。
キセキレイは名前の通り淡い黄色。そのグラデーションが綺麗です。
セグロセキレイは背ばかりか頬も喉も黒いので黒覆面を被ったよう。それで鞍馬天狗。
ハクセキレイは全体に白と印象されるうえに行動範囲が広く、河川を離れた公園や駐車場などでセキレイを見掛けたなら、先ずこれ。上の二種よりちょっと小ぶりな感じで、行動範囲が広く軽快なので若衆。

ハクセキレイはユーラシアとアフリカに広く分布しており、その行動が活発なせいか、このところ数を増しつつあるとされています。キセキレイも生息範囲は広いものの、押され気味。
セグロセキレイは日本固有種で、残念なことに数を減らしつつあるとされていますが、このところの私の印象では、一息ついているのではないかと思われます。

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ウグイス Ⅲ 心ひかれる声 何故?

心ひかれるウグイスの声

いまさら云うまでもありません。
ウグイスの澄んだ鳴き声は昔から人の心を引き付けてきました。
春の景色を謳った有名な漢詩に「千里鶯啼いて緑紅に映ず・・・」とあるとおりです。

こちらが待ち受けていると微妙に間合いを外されたり、喉の引っ掛かりが悪くて不発にずっこけてしまったりすることがしばしばあるので、それがまた、人を引き付けて逸らさないのかも知れません。
調子が乱れてさえも、その音色は澄んでいて、一生懸命ですから、聞いている方が切なくなってくるほどです。 “ウグイス Ⅲ 心ひかれる声 何故?” の続きを読む

静かに潜行? ガビチョウ Ⅱ

強烈なさえずり 京劇風な隈取

20年ほど前のことです。
いきなり、開発を逃れている小さな林の中に、大きく澄んださえずりが轟き渡りました。このあたりでは、ついぞ聞いたことのないものでした。
初めは、「逃げ出したカナリヤが鳴きかわしているのかな」と思われるほど美しく感じられたのですが、やがて、「いい加減で止めてほしい」と言いたくなるほどに疲れてきました。
切迫した感じで、大きく、長く、メリハリ無く続くのです。例えばウグイスのさえずりのような「間」というものがありません。
なかなか姿を見ることができませんでしたが、ある日の散歩の帰り、不意に例のさえずりが叩き付けるように耳に押し入ってきて、脇のヤブの下がガサゴソしました。

全体に茶褐色、ヒヨドリほどの大きさ。藪を縫うように、ボサボサという感じで低く飛びます。
目の周囲が、くっきりと白く化粧されています。「歌舞伎」や「京劇」の「隈取」のようです。

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里一番の「オラオラ顔」 シメ Ⅱ

ずんぐりシルエットに蝋色のクチバシ オラオラ顔

尻尾の短いずんぐりしたシルエットは、全体にキツネ色と印象されます。
スズメをひとまわり大きくしたほどのサイズに、ひときわ立派なクチバシを備えており、それが蝋のような色をしていることから「蝋嘴鳥(ろうしょうちょう)」とも呼ばれています。
「シッ シッ」と聞こえる地鳴きに、鳥を表す接尾語の「メ」をくっ付けたのが名前の由来です。


秋の終わりに、「ツグミ」や「イカル」と同じように北から渡ってくるのですが、早々に群れを解いて、冬は単独で過ごすことが多いようです。
黒く縁どられた鋭い目のせいもあってか、せっせっと落ち葉を跳ね飛ばして木の実を掘り出そうとしている様子は、塹壕を掘る歴戦の兵士のように真剣そのものです。

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「月・日・星」と鳴く 三光の鳥 「イカル」-Ⅱ

黒覆面に鋭い目つき

「イカル-Ⅰ」にも記しました。
ずんぐりと見える灰色の身体の上に黒覆面か黒頭巾。そこから突き出しているピラミッドのようなクチバシ。けっこうに鋭い目つき。・・・イカルが一羽で木の枝に居ると、「こわもて」といった雰囲気です。幾度見ても、これらには変わりはありません。
冬の林を歩いていると、かなり前方の枯葉の中から飛び立ち、ほとほとと縦に掻き昇る感じで高い枝にとまり、長い間、こちらを窺っていることがあります。なかなかに用心深くもあるのです。

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ツグミ 追憶

美しい胸と姿勢

ツグミは、散歩好きの人には、まず馴染みのある野鳥でしょう。
スズメより二回りほどもある身体つきは頑丈そうで重量感があります。全体に地味ですが、アサリ貝を思わすような胸の模様がたいそう美しい個体があるので、出会うたびにレンズの向こうにクローズアップして確かめないではいられないような奥深さがあります。

秋にシベリアなどから渡って来てしばらくすると、ばらばらに群を解いて冬を過ごします。
シャンと背筋を伸ばし、両脚を揃えながらホッピングして枯草の下の虫をさがし、また伸びあがってあたりをうかがう、という様子も印象的です。低く飛びながら「ケロッケロッ」と小さい声を漏らすことがありますがサエズリということをしません。口をつぐんでいることから、「ツグミ」と呼ばれるようになったということです。

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