少年のころ、ヤギのために草刈りをするというノルマを果たして背負い籠がいっぱいになると、古いダムのほとりに腰を下ろして、「あの山の向こうには何があるのだろう」と想うのがいつものことでした。テレビは白黒で画面は不安定、しかもおそろしく高価で高嶺の花。ましてケイタイも無い時代に育つことができたのは、本当に幸いだったと思います。
初夏、うっそうと枝が垂れ下がった対岸から、ウグイスのさえずりが鏡のような水面を渡って来ることがよくありました。あれほど澄みきった音色にその後に出会ったことはないと思います。そんなウグイスのさえずりに「コココココ・・・」と響くキツツキのドラミングが重なることがありました。アオゲラに挨拶してもらいます。
ケラとはキツツキのこと でも、アオゲラは特別だよ
それから何年も何年も経てこの春の終わり、私たちボランティアのフィールドの「百草分園」とでもいうべき区画の一つに居ると、一方に続いているクヌギの林の奥から、少年のころに馴染んだことのあるキツツキのドラミングが聞こえてきました。そっと踏み込んでみると、林のほぼ真ん中にクヌギと思われる一本の巨木が枯れたままそびえていましたから、さてこそと仰いで目を凝らしてみましたが、動くものはありません。くびすを返そうとしたとき、なんと、太い幹のほとんど目の高さのあたりに、見事な「アオゲラ」が取り付いているのに気が付きました。これが互いにお近づきの挨拶といった写真です。 “外国からのバードウオッチャーのあこがれ 「アオゲラ」” の続きを読む
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。