永らうべきか 滅ぶべきか そこが問題だ 「スズメ」

 スズメカラスとならんで、それこそ神話の時代からヒトの生活の脇で繁殖することを選んできました。両方とも、民話や神話によく取り込まれております。ことにスズメは、ヒトの居なくなった集落からは姿を消すとさえ言われています。警戒心を強く保ちながらも、ヒトという猛獣を利用するとは、いい度胸をしています。例によって挨拶してもらいます。

俺らの命運は あんたら次第だよ よろしくな

 スズメといえば、私には強烈な思い出があります。小学校5年生の夏休みに、ようやく兄たちを通りすぎて私のところに順番が回って来ていた「講談全集・猿飛佐助」というのを読んでいると、屋根に並んではしゃいでいるスズメの一団がいつになく気に障りました。読めない字が多くてイライラしていたのでしょう。

黙らせてやろうとして、石を放り投げたところ、ブリキの雨樋に当たって繫ぎ目をずらしてしまい、それから数日後にやってきた台風の朝に父に見破られて、「直してから学校に行け」と命令されるはめになりました。
私の家は木曽川の堤防のすぐ脇にありました。
梯子を掛けて屋根にのぼり、ずぶぬれになりながら雨樋を元に差し戻し、ホッとして振り返ると、なんと、屋根の端の向こうはいきなり盛り上がるような濁流で、巨大な岩がまくり上げられてぶつかり合う鈍い音も響いてきます。と、自分が屋根ごと上流に移動しているような不快な錯覚にとらわれてクラクラ!・・・瓦に爪を立てたまま長いあいだ動けませんでした。泣きながら父に報告し、許されて登校しましたが、たっぷり遅れたうえにを忘れてしまうとはなにごとか、ということで廊下に立たされました。スズメには何の罪もないことですが、それからもなんとなく、私には鬼門筋であり続けたことです。
レンズを通しても、今になってそんな思いが出るのでしょうか。ご覧ください。雑食性の大食漢にふさわしくクチバシやアシ太く、クビ太く、目も聡明そうで、それを集団で働かせるのですからほとんど無敵のようではありませんか。

 そんなスズメたちの個体数が、このところめっきり減りつつあるという話を聞くことがあります。いろいろな原因が言われておりますが、たとえば北海道でも少なくなっているということですから、都市部で巣をかまえる環境が減少してきているというのが主な原因ではなく、私としては、カラスとの競合に押されつつあるのだという説に賛同です。

ヒトの近くに居ながら 決して気を許さない

頑張れスズメ!!カラスと闘え。君たちは、トビクマタカの巣の裏側にくっつけて営巣することさえやるそうじゃないか。大丈夫だよ。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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