ずんぐり見えても 締まるときは・・・ 「ヒドリガモ」

 「ヒドリガモ」は、冬にはよく見られる水辺の鳥で、マガモ(オスの首が緑色のためアオクビと呼ばれる)とコガモ(オスの目のまわりに勾玉のような形をした緑色の斑)の中間の大きさです。
 多くの野鳥と同じように、オスはメスよりも彩りが華やかで、オスは眉間から頭のてっぺんまでモヒカン刈り状にクリーム色で、頬から頸までが赤みがかった茶褐色、背中にはたいそう細かい黒い斑があります。メスはほぼ全体に褐色です。クチバシは、オス・メス共通に青灰色で先端が黒くなっています。
そのクチバシが、短くて少し反りかげんであるせいか、全体にずんぐりむっくりして可愛らしい印象を受けます。 “ずんぐり見えても 締まるときは・・・ 「ヒドリガモ」” の続きを読む

トリにもリュウマチあるのかな・・・「カンムリカイツブリ」

「カンムリカイツブリ」は、日本で見られるカイツブリ類の中では56㎝という最大種で、多くは冬鳥として海外から渡来します。
 特徴となっている長い首を真っ直ぐに立てていることが多いので、凛として目立ちます。オス・メス同じデザインで、背中は黒褐色、首の前面と腹は白ですが、夏には登頂に黒い冠毛が生え、頬から後頭にかけても黒縁の飾羽を付けますから、いっそう颯爽として見えます。
 どういうわけか、冬の装いから夏の装いに移行する時期が個体によって大きな差があることは注目されているようで、1月にすでに夏服に着替えてしまっているのもあれば、5月になっても未だ冬の衣装でいる個体もあるということです。 “トリにもリュウマチあるのかな・・・「カンムリカイツブリ」” の続きを読む

オスの勾玉 メスの翡翠 「コガモ」

 「コガモ」は、日本で見られるカモ類では最も小型で体長38㎝ほど。ドバトよりいくらか大きいかといったサイズです。
 秋も早くに中國東北部やシベリアから渡来しますが、そのときはオス・メスともに同じような地味系の装いをしていて、見分けは難しいのです。
 海の向こうの繁殖地では、派手な色味は天敵などに巣を見付けられ易いので避けており、日本に来て越冬する間に、オスはカラフルに変わってゆくのです。なるべく早く、次の繁殖のために良い伴侶が得られるようにするためです。先ずはオスに挨拶してもらいます。 “オスの勾玉 メスの翡翠 「コガモ」” の続きを読む

ヒトの営みに慣れて・・・賀すべきか 弔すべきか 「オオタカ」

 「猛禽類」といえば「ワシ」と「タカ」が代表となりますが、ワシとタカとの違いは一口に云って、その大きさに依っています。
 「イヌワシ」「オオワシ」「オジロワシ」などは翼羽幅が2mを超えることが多く、名前を聞いただけで畏怖を覚えるほどですが、「ワシ」という言葉には、空の王者にふさわしいおおぶりな響きがあります。それに対し、「タカ」と聞いた方が、機敏、俊敏、精悍、といった印象を強く受けます。
 さて、日本では代表的なタカが「オオタカ」で、背中と翼の上面が黒灰色であることから「蒼鷹(あおたか)」、それが転じて「オオタカ」となったものです。オスの体長は50㎝、メスが60㎝と、メスの方が大きく、ともに俊敏で飛翔能力は高く、急降下時には優に時速100㎞を超え、空中でハトやカラスやヒヨドリを捕えるという能力を備えています。 “ヒトの営みに慣れて・・・賀すべきか 弔すべきか 「オオタカ」” の続きを読む

河川敷が溢れたときはどうするの・・・「キジ」

 ご存知のように、「キジ」は日本の固有種で、国鳥に指定されています。
 昔から屏風や掛軸に好んで描かれていますから、その絢爛とした彩りもおなじみでありましょう。それにしても、カメラというものの無かった時代に、絵描きたちは対象の一瞬を良く捉えていたこと!昔の人の絵を見るたびに感じいります。

傾いたアカシアの林

 春から初夏にかけて、多摩川の河川敷でも「ケーン ケーン」というオスの鳴き声がけっこう聞かれます。写真は、増水した時に流されてきた木や草を根元に絡ませて傾きながらも、したたかに花を咲かしているニセアカシアの明るい林です。 “河川敷が溢れたときはどうするの・・・「キジ」” の続きを読む

認知症になったらどうするのかな 「ツバメ」「イワツバメ」

 「ツバメ」は誰にもなじみのある小鳥です。
 そのスマートさにふさわしい飛翔能力には驚かされます。宮本武蔵のライバルだった佐々木小次郎の秘剣「つばめ返し」は、ツバメが華麗俊敏に身をひるがえす有り様にあやかって名付けられたものでしょう。
カルガモの上を飛ぶツバメです。

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馬に噛まれて・・・川また川を渡る

 馬‥・これに私は二度噛まれ、一度振り落とされ、一度蹴り上げられたことがある。
 一歳半ころ、ネエヤに背負われて街道に出ると、ちょうど一頭のふとぶととした運送馬が荷車につながれたまま飼葉を食べていた。「ほら、おうまちゃんよう」とネエヤが背中をねじると、カボチャのような私の頭が運送馬のほうに振り出された。馬は付き合っている気分ではなかったらしい。麻雀のパイのような前歯が私の額の真ん中に当てられ、四角く皮膚がめくれてずいぶん血が出たそうだ。これはいくらなんでも憶えていない。
 八歳のとき、仲間と木曽馬の馬市に遊びに行って、度胸試しのつもりをやった。仮の囲いと囲いのあいだを駆け抜けるのである。馬たちが両方からずらりと首をだして、丸太をカヌーのようにくりぬいた桶からボクリボクリと飼葉を食んでいた。 “馬に噛まれて・・・川また川を渡る” の続きを読む

子犬のケン

             
  〽総攻撃の命くだり
   三軍の意気天を衝く
   目醒めがちなる敵兵の
   胆驚かす秋の風
   ・・・・・
   トテーッ!
   やい、有象無象!

 乱れがちなる父の足音が、大きなだみ声ともつれあって石段を降りてきた。私が小学校二年生のころの秋の夕辺。歌は日露戦争当時の古い軍歌。父が酔ったときによく歌っていたが、正確かどうかは分からない。「トテー、やい、有象無象」というのは、父の即興の合いの手。
 ガラガラと大気を裂いて落下してくる敵の砲弾が至近であるのを知って、私はすばやく草履をつっかけ、台所から庭のほうへ避難しようとした。が、酔っ払いというものはいつでも変なところに冴えているもので、この時も父の目はすでに私の動きを捕捉しており、すかさず浴びせてきた。
「そこな、待てい。トテーッ! やい、有象無象!」
 有象無象というのは何であるか、後になってだいたい分かるようになった。もうひとつの合いの手「トテーッ!」の方は、いまになっても何のことか分からない。 “子犬のケン” の続きを読む

首振りエンジン始末記

 中学一年の夏休み、兄の一人が東京の土産に「首振りエンジン」という玩具を買ってきて来てくれたことがあった。真鍮で造られたごく小型のスチームエンジンで、一人前に安全弁の付いたボイラーと、小指の先ほどのシリンダー部分との二つから組み立てられていた。原理は蒸気機関車に付けられているのと全く同じなのだが、この小型の原動機のシリンダーは、いやいやをするように左右に揺りながら勢車(はずみぐるま)をまわすので、「首振りエンジン」と呼ばれる。ぎりぎりまで簡素に工夫された実に愛くるしい機関である。
 これを搭載するにふさわしいものとして、私は船を造ることにした。幅十六センチ、長さ六十センチもの大船を設計し、「信濃」と名づけ、波を蹴散らして進む勇姿を想像しながら一週間ほどは無我夢中だった。ブリキ板を三十センチもある装甲鉄板にみたてて、手を傷だらけにしながらハンダ付けをした。機関部を取り付ける際には、上級の技師を買ってでている兄に厳しく監督された。 “首振りエンジン始末記” の続きを読む

冬の半魚人

 中学二年の晩秋の夕暮。私たちは一列縦隊になって山道を走っていた。まず足腰を鍛えようという野球クラブの訓練で、学校から出て「黒川渡ダム」をひとまわりして帰ってくるというのが定番のコースだった。なるほど、木の根や石ころをうまく避けて走ることは野球のためにもわるくないトレーニングだったろう。急な坂をのぼりつめると、こんどは木の間越しに黒い水面を透かしながらの下り坂が続いた。私たちは勢いづいて駆け下りにかかった。
 「なんだ!」
 先頭を引き受けていた先生がいきなり立ちすくんだので、全員がたたらを踏んで追突をくりかえし、斜面から落ちかかった者もいるほどの混乱となった。

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