春も本番となると、多摩川の河川敷はその中洲までが、いちめん黄色の花で埋めつくされる所が少なくありません。アブラナが野生化したもので、「セイヨウアブラナ」と「セイヨウカラシナ」が群落をつくって場所を取り合っているようです。
その花が終わりに近づいて実に代わるころは、「カワラヒワ」たちにとっては楽園でありましょう。
春のうららの・・・もういくつ寝ると食べごろかな
4月中頃の写真です。止まっているけっこう丈夫そうな草を見てみます。葉が茎を巻くようにして付いているのがセイヨウアブラナ、茎を巻かずにすんなり葉が出ているのがセイヨウカラシナ。するとこれはセイヨウカラシナであることが分かります。この2種類が競いあっているわです。
さて、カワラヒワ。全体に地味に見えることからもスズメに間違えられることがありますが、クチバシがスズメよりもさらに太くがっしりしていてピンクに近い色をしていること、翼に黄色の帯状の斑があって飛んでいるときは特に目立つこと、尾が魚の尾びれのように中央がくびれていること、などから見分けがつきます。
草木の種子が好きで、もちろんアブラナばかりではなく、タンポポやハコベの種子、ヒマワリ、アワ、ヒエなどを食べます。
さあ いただこう
これらは5月上旬のショットです。本来、ピンク色のクチバシがアブラナのタネがこびりついて汚れてしまっていますが、それにしても、ものすごい種子の数です。
小鳥たちに食べ尽くせるどころではありません。これだから、河原に拡がるわけで、こんなところにも植物の逞しさに感心させられます。「一部は糞に変えてもらって、肥料として利用しましょう」くらいの戦略を持っているのでしょう。
初冬は高い木の梢にとまっているのも目立ちます
カワラヒワはほとんど日本全国で留鳥として棲息しますが、北海道以北で繁殖するものは冬鳥として本州に飛来します。雪に埋もれてしまって、食べ物が見つけにくくなるからです。
私の印象ですが、冬鳥としてやって来る野鳥たち、たとへばツグミやカワラヒワは、本来、地面の近くで餌を探すことが多いのですが、晩秋から初冬にかけては見晴らしの良い高いところに留まっているのがよく見られます。
これから過ごす、新しい土地の様子をよく見ておこうとしているのだと思います。
下の写真は11月下旬のものですが、上がカワラヒワ、いちばん下の写真はツグミとシロハラです。シロハラはツグミの親戚すじですが、単独でないというのは、この時期に限られた珍しいことだと思われます。
カワラヒワは、「キリリ キリ キリコロロ ビーン ヴイー」などとさえずりますが、力強く声量もあります。体つきもがっしりして見えます。
「弱い」ことを「ひわひわしい」ということがあり、そうしたものが河原に居ることが多いというので「カワラヒワ」と呼ばれるようになったという説がありますが、ちょっと合わないような感じがします。もっとも「ヒワ」には多くの種類があり、日本に棲息するものに限っても「マヒワ」「ベニヒワ」などはひわひわしいかもしれません。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。