思い出につながる「ヤマガラ」

シジュウカラのトレードマークは、白い胸に黒いネクタイ。ヤマガラのそれは、茶色のチョッキに黒の蝶ネクタイ。ともに虫などを求めては枝から枝へとせわしなく渡ってゆくので、写真のターゲットとして捉えるのはやさしくありません。まずは、挨拶してもらいます。

エッ! ボク? ボク ヤマガラ

茶色のチョッキをカメラのファインダーに入れるたびに、幼かったころの木曾谷の夏祭りを思い出します。先の大戦後も数年間、「木曽馬」の馬市はサーカスの小屋が立つほどににぎわったのですが、農耕機械などの発達とともに馬市は次第に先細りとなって、ついに消滅してしまいました。おとなしくて働き者だった木曽馬は必要でなくなったのです。それから谷は過疎化に向かうのですが、女神さまを祭ってある「水無神社」の祭りだけは輝きを失わないように、谷の人々は踏ん張り続けました。
中仙道の関所跡から下って来る道に沿って並んだ露店、アセチレンガスを使ったランタンの特有な刺激臭、木曾節の踊りの輪、谷の狭い空を塞いでしまいそうな打ち上げ花火と轟音。・・・そうした賑わいをちょっと外したところに、「ヤマガラのおみくじ引き」という芸が出ていることがありました。

ヤマガラ 芸をする

竹の小鳥籠ミニチュアの社殿が1メートルほど離して置かれており、その間をマクラギ状に等間隔で並べられた可愛らしい止まり木がつないでいました。お客さんがいくらかの心付けを店の主人に渡しますと、竹かごから1羽のヤマガラが姿をあらわし、チョンチョンとミニチュアの赤い鳥居をくぐり、さらに進んで可愛らしい賽銭箱に、くわえてきた小さな銀色の賽銭を投げ入れます。その上のスズをつついて2度鳴らし、なんと、社殿の扉を左右に開き、奥から白い「おみくじ」を1枚ついばんできて、お客さんの前に落とし、自分はご褒美をもらってから籠の中に戻るのです。10秒ばかりの間に、結構に複雑なことをスピーディにこなすのでした。あのような「ユネスコ文化遺産」級の芸は、今も伝承されているのでしょうか。スズメでもシジュウカラでもなく、どうしてヤマガラなのでしょうか。

頭の中央を走るモヒカン族のような白い線のおかげか

どうしてヤマガラにはあれほどの集中力があるのだろう。どのようにして、あれだけのことを小鳥の頭の中に組み上げてゆくのだろう。昔の人の知恵には計り知れないものがあります。
挨拶の写真を見直してみてください。ヤマガラは、冬の山椒の実のようによく光る、賢そうな目をしております。

里山での活動ぶりは結構に野生的なんですが


 

 

 

 

 

 

 

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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