大きなクチバシ 鋭い目つき 「シメ」

 グラデーションの効いた茶灰色、おおきなクチバシが冬には肉色、短い尾などのため、全体にずんぐりして地味な感じを受けます。
 「シメ」は、スズメをひとまわり大きくしたほどのサイズで、あまり警戒心も強くないために、冬の里山でしばしばお目にかかる野鳥です。・・・けれど、けっこうに並みでないところのある鳥だと私は思います。

「カラス天狗」を思わせるクチバシ

 顔の半分も占めるほどに、ピラミッドさながら鎮座しているクチバシは蝋のように見えることから「蝋嘴鳥(ロウショウチョウ)」とも呼ばれるそうですが、このクチバシはロウどころではなく、噛みしめる力は30㎏にも達するとされています。果実の肉の部分ではなく、もっぱら、硬い実を割り砕いて中身を食べるためです。
 ちなみに、ヒトがものを噛む力は、おおよそ体重と同じほどだとされていますから、たとえば体重40㎏の女性は、40㎏ほどの噛む力があるということになります。スズメをひとまわりほど大きくした小鳥が、30㎏の力で噛めるというのは並みではありますまい。
 目からクチバシにかけて黒く縁どられており、その目が鋭く見えることが多いことからも「カラス天狗」を想わせます。

 方向によって、もっとクチバシが大きく見えることがあります。奇妙に可愛らしく見えることもあります。

鋭い鳴き声のはずが・・・林を包む春の歌に・・・?

 「チチッ」「ツィリリー」と鋭く鳴き交わしながら、普段は数羽で行動していますが、北に渡る春の中頃になると、どこそこから集まってきて群れをつくります。そんな春の晴れた午後のこと、ナラの高木が連なっている林のなかに踏み入れて、不思議な経験をしたことがあります。
 まるで野外音楽堂の真ん中に立ったように、優しくて軽やかな音色に包まれたのです。無数の木の芽たちがそれぞれに声をあげて合唱に加わったらこうもなろうかというような、控えめなハーモニーでした。
 仰ぐと、青い空を背景にして、枝々に休んでいるシメたちの白い腹がたくさん見えました。それぞれに冬を越して久しぶりに再会し、挨拶やら報告を交わしているのに違いありません。あちらこちらで小さな渦がぶつかり合って転がるような春の歌でした。
 そんなふうにシメたちが群れている様子を、私はもちろん連写しました。ところがその夜、何枚ものスナップのうちから一番気に入ったのを残そうとしていて、誤って、グループ全部を削除してしまったのです。うっかり者の私にはしばしばあることで、あるときは、16GBのメモリーカードに撮りためたデータの全部を一瞬で消してしまったことがあります。せめて7羽がならんでいる姿を見てください。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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