「カワセミ」には、さまざまな書き方や呼び方が与えられており、絵本や写真集もいっぱいあります。昔から関心を持たれていた証拠でありましょう。「飛ぶ宝石」と言われるのも納得ですが、私にすれば「一直線に飛ぶ宝石」という方がしっくりくるようです。
全長17㎝ほどありますが、クチバシがひどく大きいので、身体だけを比べれば「スズメ」ほどの大きさです。大きなクチバシを支えている頭も大きく重そうなので、飛ぶときは翼をこきざみに動かして、つんのめるような勢いで一直線に高速で飛びます。そうした時の鳴き方も「チッ ツー」と直線的です。それでいて、魚の上でホバリングしてタイミングを計ったりもしますから、おそれいったものです。
ヒスイ? いいや いろんな宝石のように光りますよ
挨拶してもらったのは、クチバシの下側が紅色をしたメスです。クチバシが全体に黒い方がオスです。一時期、危機的に数を減らしましたが、川が復活してきれいになるにつれ、都市部でも増えつつあります。
自在水中メガネ付き
下の写真の1枚では目が黒く澄んでいますが、同じ個体を撮ったその下の写真では、目が濃いグレーにくすんでいます。カワセミは、さかしまに水中に飛び込んで魚などを捕まえますが、そのときゴーグルのようなもの(瞬膜)が瞬間に目頭の方から滑り出てきて、水の中をはっきりと見ることができるように進化しています。
枝の上でメガネをかけているのは、ダイビングの前に、ゴーグルの作動の調子を確かめているのかも知れません。あるいは「偏光グラス」のような機能も備えていて、水面下の魚を探しやすくなっているのかも知れません。生き物は、生き継ぐためには何でもありですから・・・。
羽毛の微細な構造でさまざまに輝く
青い色は色素ではなく、羽毛の微細な構造に入る光の加減で、輝くようにさまざまに見えます。これは、シャボン玉が七色に輝くのと同じ原理だということです。たしかに同じ背中でも、ちょっと日がかげったりすると、違って見えるものです。
「カワ」に棲む「セミ」というのが名前の由来です。セミは昔の「ソニ」から変転したもので、そのソニとは「青い土」のことだそうです。最後に、カワセミに当てられたさまざまな漢字を並べてみます。「翡翠」「魚狗」「水狗」「魚虎」「魚師」「鴗」「川蝉」・・・昔から人気があったのですね。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。