「ヒドリガモ」は、冬にはよく見られる水辺の鳥で、マガモ(オスの首が緑色のためアオクビと呼ばれる)とコガモ(オスの目のまわりに勾玉のような形をした緑色の斑)の中間の大きさです。
多くの野鳥と同じように、オスはメスよりも彩りが華やかで、オスは眉間から頭のてっぺんまでモヒカン刈り状にクリーム色で、頬から頸までが赤みがかった茶褐色、背中にはたいそう細かい黒い斑があります。メスはほぼ全体に褐色です。クチバシは、オス・メス共通に青灰色で先端が黒くなっています。
そのクチバシが、短くて少し反りかげんであるせいか、全体にずんぐりむっくりして可愛らしい印象を受けます。
のんびり ふくらんで日向ぼっこ
ご覧のように、小春日和の湖の端では、いたって呑気そうに膨らんでいます。静かな水面を、並んで動いている様子ものんびりして見えます。
ヒドリガモは大陸の亜寒帯といったところで繁殖し、冬を越すために日本に飛来するのだそうですが、「こんなで海を渡れるのかなあ」と本気で心配になるほどです。
しかるべき時には 一変
その冬の終わりのころ、東京都の特に多摩地方にかなりまとまった雨が降りました。次の朝はやくに多摩川の河川敷に立ってみると、同じ河とは思えないほどに川幅が広がっており、濁った水が岸のものを引きずり込むほどの速さで流れ下っていました。
そんな濁流の中に、流れに逆らって上流を目指しているカモらしいものが居るのに気が付いたので、レンズを向けて拡大してみました。すると、視野の中をしきりに上下しているのは、ずんぐりむっくりどころではなく、イタチのように身体を低くして波と闘っているのは、なんと、ヒドリガモでした。
彼らが何のためにこのようなことをしているかというと、増水しただけに普段には無い食べ物が流されてくるのを、素早く選別して食べているのです。
なるほど、日本海を渡って来られるはずです。野性というのもは、こういうう精悍さを、やはり秘めているのだと教えられました。
一番下の写真は、流れが少し淀んだところに移って、しばらく休んでいるところです。それだけ、身体が浮き上がっています。
そうそう・・・「ヒドリガモ」という名前は、首の色の「緋」から付けられているということです。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。