「コガモ」は、日本で見られるカモ類では最も小型で体長38㎝ほど。ドバトよりいくらか大きいかといったサイズです。
秋も早くに中國東北部やシベリアから渡来しますが、そのときはオス・メスともに同じような地味系の装いをしていて、見分けは難しいのです。
海の向こうの繁殖地では、派手な色味は天敵などに巣を見付けられ易いので避けており、日本に来て越冬する間に、オスはカラフルに変わってゆくのです。なるべく早く、次の繁殖のために良い伴侶が得られるようにするためです。先ずはオスに挨拶してもらいます。
目のまわりから頸の後ろへ 濃緑の勾玉模様が売りです
勾玉を連想させるように目の周りから流れる濃緑の斑に加えて、頭の栗色、灰色の身体の横に入った白い線、尻の横に三角形の黄色模様、となかなかにカラフルです。
一方のメスは全体に茶色で地味です。夫婦で並んでもらうと違いがよく分かります。
私の売りは 翡翠のような翼鏡です
ところでカモの類には、次列風切り羽の一部、飛行機に例えれば主翼のフラップに相当するところに「翼鏡」と呼ばれるスポットがあるのが有名で、飛翔中や羽ばたいている時などに、フラップの角度の加減でさまざまに輝くのです。
コガモのメスはとりわけ地味作りですから、彼女たちの「翼鏡」のきらめきは、とりわけ美しく映えて目を引き付けます。下の2枚の写真に、そのほんの一部が少しの角度で色を変えて写っております。
どうしてこのような特別なカラクリがあるのでしょう。
カモたちの多くは海を渡らなければなりません。鋭い勘で天候を見極めてのことであるにしても、読み違いはあるはずです。まさかのときに互いを見失って迷わないように、翼の後縁が反射しあう必要があるのだろうと私は思います。最近はヒトがそういうことを真似て、自転車のペダルやランニングベストの背中などに特殊な反射板を張り付けているではありませんか。
生き物は余計なことはしません。自分たちの存続に必要なものは、必ず選別して役立ててゆくものでしょう。
おわりは、北の繁殖地に渡るために日本を去る前のコガモの群れです。おおよその番ができているように見えます。帰って来る秋を待っております。ご無事で!
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。