この国の行方 分岐点へのタイムリミット7~9年 Ⅴ 北欧に見る 厳しい自然を生かすのはヒト

北欧の国々に見る 厳しい自然を生かすのはヒト 

 北欧の4か国、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドは、世界の「幸せな国ランキング」で毎回最上位にならぶ常連たちである。揃って高負担高福祉社会を選んで、格差と貧困と少子化を克服している。
 昨年の夏、筆者は駆け抜けるように北欧を巡ったが、この旅を思い出すたびに「さわやか」という印象がよみがえって来る。北欧の人々は、のびのびと活動しており、穏やかでシャイとすらいえ、親切であった。

おもてなし」は日本だけのものではない

 たとえば、ノルウェーの「フロム山岳鉄道」はノルウェー鉄道技術の傑作とされているように急勾配を登るが、標高676mに達した時に全落差225mという「ショスの滝」をまたぐ鉄橋の上に臨時停車する。しばらくすると、3人の妖精が滝のところどころに現れてそれぞれに妖精の舞を舞う。氷河から解け出たものであろう0度近い水をまともに被っているわけではあるまいが、脚を滑らせたらそれっきりという命懸けのパフォーマンスである。

 「ハンザ同盟の基地」を世界遺産として残しているベルゲンの港に魚市場がある。新鮮な海産物を並べたテント張りの店がたくさん並んでいて、好きなものを選ぶと、すぐに料理してテントの続きで食べさせてくれる。とりわけタラバガニがみずみずしくて美味しかった。カニを食べるには、フォークよりも箸の方がやり易い。念のために、ハシは無いだろうかと尋ねると、たちどころに袋入りの立派な竹製の箸が届けられた。
 隣の席の中年のカップルが、テーブル狭しと料理とカップを並べていた。スウェーデンから来た夫婦だという。話が地震のことになったとき、「地面が揺れるというのを想像できますか」とたずねると、「それにツナミ!」と首を横に大きく振りながら、夫婦して身を震わせていたが、「日本人は何事につけてもbrightだ」と言った。cleverとかintelligentなどといわれるよりも嬉しかった。震災から復興する逞しさなどを意識して言葉を選んでくれているのだろうと、その心遣いが嬉しかった。 “この国の行方 分岐点へのタイムリミット7~9年 Ⅴ 北欧に見る 厳しい自然を生かすのはヒト” の続きを読む

ほんのひと昔前まで・・・人はどのように育ったか

1980年代までのこの国において、「人はどのように育ったか」を筆者なりのまとめをしてみたい。現在のそれと比較できればと思うからである。

1 高い成長を続けた稀有の20年
2 図にしてみる
3 ロバ的な適応の功罪
4 マイノリティのさまざま

1 高い成長を続けた稀有の20年

日本は、戦後10年を過ぎたころから年10%前後の経済成長を20年近くも続けてきた。乱暴な要約であろうが、「年功序列を基本として仕事を保障される」という独特な就労慣行が好循環を支え続けたもので、世界の歴史上でも稀有のことだという。給与は低く抑えられる傾向と引き換えではあったが、所得に対する安心感は高く、それも右肩上がりの経済成長のおかげで着実に豊かになってゆくという実感を人々は持ち続けることができた。「地道に努力すれば相応に報われる」「安寧と秩序」ということが社会的価値の物差しとして強く機能し、公共の場における行動の仕方もはっきりしており、「一億総中流」という表現は、この国の人々のメンタリティにしっくりと馴染むところがあった。「平等感」というものは人々のストレスを軽減させる大きな要素の一つである。 “ほんのひと昔前まで・・・人はどのように育ったか” の続きを読む