日本と北欧と世界 日本だってやれるぞ!  そのⅡ 自然災害と天然資源

この記事は「日本と北欧と世界 日本だってやれるぞ!」を下のように分割したものの、そのⅡです。

目次
そのⅠ ある中年カップルとの会話
そのⅡ 自然災害と天然資源について
そのⅢ 来た道 似たところと違うところ
そのⅣ 自然との向き合い方について
そのⅤ デザインについて
そのⅥ 幸福度ランキング そして自殺
そのⅦ 日本の今の豊かさ 「貿易立国」から「投資立国」
そのⅧ 世界が見る日本 なぜ最高の国ベスト3に入るのか
そのⅨ 北欧よりも日本にあるもの
そのⅩ 私の精一杯の提言

自然災害について

ノルウェーの国土はおよそ38.5万㎢でほぼ日本と同じ大きさです。

ところが、世界の陸地の0.3%弱を占めるだけであるにもかかわらず、日本は
全世界で起こる大きな自然災害のおおよそ20%を引き受けてるという超災害大国です。地震、津波、噴火、台風などがもたらすものです。

これに対して、北欧の自然災害はほとんど0%と言っていいでしょう。

そもそもノルウェー、スウェーデン、フィンランドは「スカンジナビア岩盤」という古くて硬い御影石の上に乗っており、火山というものがありません。
体感できる地震はまずありません。地震がないのでツナミもあり得ません。

台風、ハリケーン、サイクロンといった熱帯性低気圧起源の暴風雨も関係ありません。北海道よりもはるかに北にありますから。

雪はどうだ
寒いだけに雪害には悩まされるだろうと思うのですが、氷河が削った窪地に雪は吹き溜まるものの、建物の屋根や道路にどっしりと降り積もるということはあまりないそうです。サラサラしていて処理し易いのです。必要な除雪は手際よくなされるそうです。

水はどうだ
春には雪解け水が解けて鉄砲水になるだろう。これには困るだろう・・・少し困ってくれ。
たしかに、春から夏への移行が速いので、氷が塊になって溶け出すことがあります。地形の狭まったところを堰き止めてしまってダムのようなり、溢れた水が付近の民家に床上浸水をもたらすというニュースがあるようです。
これには、適宜に堤防を嵩上げするなどの手当てが進んでいることで、被害件数は少なくなっているとのことです。

天然資源について

日本人の一人当たりGDPは年40000us$ほど。その経済活動のために使うエネルギーの一人当たり消費量は年3500㎏(石油換算)ほどです。
それに対して、ノルウェーの一人当たりGDPは80000us$、一人当たりエネルギー消費量は6000㎏。
ノルウェーは、一人当たりのGDPもエネルギー消費量も、日本の2倍ばかりも大きいのです。

この差はどこから生じるのでしょう。
日本のエネルギー自給率はわずか10%、ノルウェーはなんと800%! すべての基盤であるエネルギーを得ることからして大きなハンディがあるためだ、と諦めるより仕方がないのでしょうか。
いや、違うな! ノルウェーのエネルギー自給率は日本のそれの80倍だけど、一人当たりGDPは2倍だけ。人の生業というものは、そう簡単ではないんだよね。このあたりに考える余地があるのだ。

石油資源とそれがもたらすもの
ノルウェーの海岸線はながながと、北海、ノルウェー海、バレンツ海に面しており、その大陸棚に石油と天然ガスが埋蔵されているのです。

結構にコストが掛かりはするものの、ノルウェーは石油関連事業から得た利益の全てを国民の将来の年金資金として、国外金融市場に投資して積み上げています。
ノルウェーの人々は、むやみにはしゃぐことをしません。石油の埋蔵量が枯渇することを用心しているのです。
積み上げたものの残高は国家予算の5年分である100兆円を超えるまでになっており、ほぼ日本の国家予算一年分に匹敵します。

その日本は貯金ができるどころか、国家予算の9年分に相当する900兆円という超巨大な財政赤字を抱えてしまっているのは周知のとおりです。
この局面で見ても、まるで天国と地獄です。

水資源よ お前もか
日本もノルウェーも、年間2000㎜ほどの降水量があります。
これを活用した水力発電で、ノルウェーは全消費電力の95%をまかなっています。
振り返って、日本の水力発電は全消費電力のわずか8%を担うのみ。必要な電力の80%は石炭、石油、天然ガスを使った火力発電に依っています。化石燃料を燃やして、CO₂を盛んに排出しているのです。クリーン度でも月とスッポン?

スカンジナヴィア半島は硬い岩盤を氷河が削ることで出来上がったものなので、波打った台地に水が溜まった自然湖が沢山あります。「人の数より湖が多い」というのを少年のころに読んで、ヨダレを垂らした憶えはありませんか。島か湖一つずつに家付き、というのが普通の生活なのですよ。
水資源を活用しやすいように自然が用意してくれているのですが、ノルウェーは独特な技術も駆使しています。自然湖にダムを組み合わせ、景観を考えて発電設備を地下に設け、そうしたユニットを地下トンネルで複雑につなぎ合うことで、水資源活用の効率を高めています。岩盤がしっかりしているのでトンネルをコンクリートで補強する必要もなく、素掘りのままで使えるのだそうです。やっぱり、今になってもヨダレものです。


フィヨルドとオーロラ これが仕上げだな

ご存知、ノルウェーのフィヨルドの景観は圧巻で、世界屈指の観光資源となっています。選り抜きのフィヨルドを覗きながらオーロラを訪ねるクルーズ、などというのもあるそうです。
いきなり津波が襲ってきて、船ごと崖に叩きつけてぺしゃんこになるかもしれない、といった心配も要りません。眠ければ、いつだって寝ていて良いのです。

あれもこれも自然からの贈り物なのですが、考えてみれば、それらを十分に活用できるようになったのは、ごく最近のことです。近年の生活技術の発展をベースにして、北欧諸国は頭角を現してきました。

エネルギーと食料の自給率についてのまとめ
エネルギー自給率 日本10% 北欧4か国平均250%
食糧自給率    日本40% 北欧4か国平均105%
彼らはなんと恵まれていることか! たっぷり使って、たっぷり食べて。有り余ってしまうので、氷で身体を冷やさないといけないのでしょうか。

次には「自然との向き合い方について」を考えてみたいと思います。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

「日本と北欧と世界 日本だってやれるぞ!  そのⅡ 自然災害と天然資源」への2件のフィードバック

  1. ロウボウ先生
    早くも9月最終週を迎えましたね。
    いかがお過ごしでしょうか。
    北欧と日本の比較、そのⅡ.そのⅢと大変興味深く拝読いたしました。
    「与えられていないけれども、与えられているように振る舞って走り続ける」日本の行動パターン。
    粗雑にして豪胆な奇妙な特性。
    それは日本の資源不足と災害多発により、日本人が日々の折々を捉えて繊細に自然との融和を求めてようとすることからの行動パターンや特性なのですね。
    視点が面白く、なるほどと深くうなづきました。
    日本人を客観的に見た冷静な視点に驚きます。
    資源がないのにもかかわらず、大国と対等に渡り合おうとする負けじ魂。
    これが日本人の誇るべき器用さや繊細な精神なのですね。
    今回のコロナ災害もなんとかここまで乗り切ることが出来ましたもんね。
    課題はまだまだあるでしょうけれども。
    ロウボウ先生、今後のテーマも楽しみにしております。
    ありがとうございます。
    季節の変わり目です。体調に気をつけてくださいね。
    最近NHK放送で日曜日の夜11時からの「アンと言う名の少女」というドラマに感動し、楽しみに観ております。大草原の小さな家を思い起こさせる素敵なドラマですよ。
    日が短くなり、少し気持ちが下向きになりがちな日々ですね。
    素敵な秋をお迎えくださいね。

    1. いつものことですが、よく読んでくれています。ありがとうございます。
      ちょっと変わると、この国はもっと元気に、もっと豊かになれるのですが・・・。
      「アンという名の少女」。見てみます。
      北海道の人が東京に来て「東京は寒い!」とは、しばしば聞きます。
      北海道は暖房が行き届いているようですから。
      北欧の人が日本に来て「日本は寒い!」と言うのも同じことなのでしょうね。
      お元気でお過ごしください。

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