スズメバチと言えば、日本では最も危険な野生動物として知られています。年間20人ほどが犠牲(アナフラキシーによる)になっており、これはマムシやハブなどの毒蛇や熊によるものよりも多いのです。
キイロスズメバチ
日本には3属17種類のスズメバチが棲息しており、わけても「オオスズメバチ」と「キイロスズメバチ」が横綱級とされています。
なかなか堂々とした飛行ぶり。上がオオスヅメバチ、下がキイロスズメバチ。
写真であると細部の違いが分かります(キイロスズメバチの方が背中の黒い部分が少なく、肩にも黄色な斑紋があり、脚も黄色)が、飛翔しているときは全体の印象で判別しなければなりません。
キイロスズメバチは黄色味が強く、光によってはオレンジ色に印象されます。それで私たち木曾谷の子供たちは、キイロスズメバチのことを「アカバチ」と呼んでいました。
アカバチことキイロスズメバチは獰猛さと毒の強さでオオスズメバチに引けを取らないばかりか、執拗さと適応力の大きさでは上を行っており、都市化した環境に食い込んで繁栄しています。ヒトが「あぶない」といって騒ぎになる相手は、おおかたキイロスズメバチです。
遠い日のアカバチ
アカバチというと、きまって、オレンジ色のものがキラキラと踊っている夏の日の山道が思い出されます。スマホやゲームどころか、テレビさえ無かった遠い日々のことです。
木曽福島の人々が氏神として親しんでいる「水無様」はおきゃん(?)な女神様です。そのおきゃんぶりは「ロウボウのポケット」というカテゴリーの中の「水無様 愛嬌たっぷりな女神さまのお話」で紹介してあります。良かったら読んでみてください。
「水無神社」は鬱蒼とした森の中にあり、その境内は子どもたちの格好な遊び場でした。そこまで行くには、谷の底の木曽川に沿っている家並みから1.5㎞ほど山道を登らなければならず、途中に、赤松の老木の幹と枝が大きくせり出してきていて、トンネル状に道を狭めている箇所がありました。
その赤松の最初の枝分かれのあたりに、アカバチの一族がずっと昔から巣を構えておりました。巨大なものです。水無様に会いに行くにはトンネルの関所を抜けなければならず、「行きはよいよい帰りはこわい」で、日に2度、子どもたちにとっては必死の度胸試しでした。
ジャンケンをしました。一番手二番手ほどはまず安全に駆け抜けられます。下を通っただけで、見張り役が警報を発するのでしょう。ゾヨッと巣の全体が色めき立って揺らぐようです。
ハチたちを驚かせないように、こごみながらゆっくり行けと言い合うのでしたが、攻撃部隊がざわざわと動き始めるのを目の隅に捉えると、たまらず走り出してしまいます。
追われたら地面に伏せて死んだふりを知ろ、と教えられていました。
「行った、行った、伏せろ!」「尻の上に止まっているぞ!」「動くな!」「目を守れ!」・・・後方からの大騒ぎの声援。
キラキラと飛び回るオレンジ色の輝き。草も木も風も。子どもたちは全開でした。
いくらか静まるのを待ってから、次の順番の子が動き出します。アカバチは執拗で、警戒と追跡を止めません。全員がトンネルを抜けるまで、たっぷり夕方近くまで、私たちはスロットル全開でした。
被害も巣も最大級
日本原産。毒の強さはオオスズメバチを超え、攻撃性が高く執拗。巣は樹木の洞、屋根裏、床下などに。手狭になると橋の下、軒下などの開放空間に出る傾向。最大級80㎝にも。
写真は我が家のベランダの下に。どうしたわけか、この大きさで遺棄されたもので直径15センチほど。マーブル模様。
私はアシナガバチに刺されたことは幾度かありますが、スズメバチに刺されたことはありません。それで今、彼らに近づいて写真などを撮っていられるのでしょう。しつこく追いかけているは私の方なのです。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。
3年前、私の庭でもスズメバチの巣がみつかりました。
まずは見事な造形美に感動、できたら飾っておきたいくらいでした。
その時のことを拙いブログに残してありますので覗いていただけましたら幸いです。
https://yuusugenoniwa.blog.ss-blog.jp/2016-08-20
ブログを添付していただき、誠にありがとうございました。
良く調べられていますね。なるほどなるほど、腹の二番目の黒帯の太さ。
私が一番初めに載せたのはオオスズメバチではなく、どうも、コガタスズメバチのようです。(汗)
オオスズメバチとキイロスズメバチの危険度を5とすると、コガタスズメバチやクロスズメバチ(ジバチ)のそれは3程度ほどとのこと。
巣の美しいこと。子供たちのハニカム構造の揺り籠にしろ、層の積み重ねにしろ、設計図もメジャーも無しで、なんとまあ!
どうしてあのようなことができるのでしょう。昆虫たちには驚かされるばかりです。
また、お教え願います。