さえずらない ヒバリ
冬の野原、ことに河川敷を歩いていると、10メートルほど先の枯れた草むらから褐色のものが飛び出して、まっしぐらに低い高度で対岸に向かうか、行方の草むらの中に突っ込んで見えなくなるか・・・、しばしば出くわす光景です。木の枝に止まるということをせずに、褐色のものが枯草に紛れ込むのですから、正体をしげしげと見られるということはあまりないと思います。向こうさんは草のあいだから何時だってこちらをお見通しというわけですから、ヒトとコトリの大きさの違いからとはいえ、どうも分の悪いことです。
ある日、3〜4メートル先の藪の中がチラリと動いたような気がして、・・・と、向こうさんは何かによほど気を取られていたのでしょう。居ました。両方とも「おっ 何?」という具合でした。
おっ 何?
「タヒバリ」とは「田ヒバリ」のことです。広く開けた農耕地や川原などに見られる冬鳥です。大きさや色合いは「ヒバリ」に似ていますが、セキレイの親戚とされ、何よりの証拠に、タヒバリはセキレイと同じようにリズミカルに腰と尾を上下に振ります。セキレイのように波状に飛ばず、まっすぐに低く飛ぶところは似ていません。
逃げよ
あれまだ
秋にサハリン、千島列島、アラスカなどから日本にやって来て越冬し、草の実や昆虫類を食べます。
ご覧のように、胸に印象的な斑点があるものの、これも褐色で枯草に良く溶け込み、その上なかなかに警戒心が強いようです。
悪いやつではなさそう
飛び立たずに、少し行っては立ち止まってこちらを窺います。ここまで付き合ってくれるのは稀なことです。
いっそ 開けたところに出ましたよ
それにしても あんた何物?
いやですね
やっぱり逃げよ
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。