河川敷が溢れたときはどうするの・・・「キジ」

 ご存知のように、「キジ」は日本の固有種で、国鳥に指定されています。
 昔から屏風や掛軸に好んで描かれていますから、その絢爛とした彩りもおなじみでありましょう。それにしても、カメラというものの無かった時代に、絵描きたちは対象の一瞬を良く捉えていたこと!昔の人の絵を見るたびに感じいります。

傾いたアカシアの林

 春から初夏にかけて、多摩川の河川敷でも「ケーン ケーン」というオスの鳴き声がけっこう聞かれます。写真は、増水した時に流されてきた木や草を根元に絡ませて傾きながらも、したたかに花を咲かしているアカシアの明るい林です。

 そんなところを歩いていると、足元から「ドドドドド」と羽音を轟かせて、尾の長いニワトリといったほどの大きさのキジの夫婦が、草の上を引っ張られた凧のようにすれすれに飛び、数メートル先でヤブに突入して姿を消すという光景に当たることがあります。
 そこに近づいてあちらこちら覗きこんでも、まず見つかるものではありません。地面に直接にを作りますから、ヒトや野良猫などから身を守らなければならず、なかなかに警戒心が強いのです。

見てる 深い胸の色が貫禄

 そうした時は、動かずに待ってみる方が良いようです。キジは明るい広がりを好むようで、しばらくすると、かなり方向の違った平らみに姿を見せることがあります。が、残念、間にいっぱい邪魔物が入っていて一部しか見えません。できるだけ見通せる方向にこちらが移動しようとすると、相手はまた草藪の中へ。そんなことを3度ばかり繰り返して、逆光ではありましたが、やっと撮ることができたのがこれらの写真です。4月下旬のことでした。

 空には、遡上をはじめたアユを求めて、シラサギが上流に向かっており、近くの小枝には羽の生えた子ネズミといった風の可憐なセッカが歌っていました。

猛暑の中の子守り

 「焼け野の雉」というたとえがあるように、キジは子を想う気持ちが強い鳥なのだそうです。野火が近づいて卵やヒナが黒焦げになりそうになっても、親鳥は巣に覆いかぶさるようにして守るのだそうです。これがこの頃の風景ともなると、エンジンを轟かせながら「刈り払い機」で下草を刈り取っていたら、母さんキジの首を切り飛ばしてしまったというふうになるのでしょう。最後の最後となったら、息をひそめて身動きせずにいるというのが野生動物のおおかたのやり様なのです。
 さらには、大雨のために堤防までも水没しそうになったらどうするのだろうというのも気になります。
 8月下旬の無類に晴れた早朝、母親がヒナたちを連れ、堤防を越えようとしているところに偶然に出くわしました。先に行くように子供たちをうながして駆けさせ、自分はじっとこちらをうかがっていました。大水が襲ってきたときも、激しい雨脚のなかで、同じようなことをするのだろうと思いました。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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