黒いスイミングキャップを被って、全体はくすんだ水色。
ヒヨドリほどの大きさの身体に目立って長い尾。それでオナガ。
トレーマークの長い尾をなびかせながら、縦隊になってするすると木立を縫うありさまには、舞を見るような独特な雰囲気があります。
スマートさに似合わず「ギューィ ゲーイ ギー」などと鳴き交わすのが似合っているような、そうでないような・・・。
不思議な盛衰
4・50年前から繁殖が激減しました。
全く新しい托卵先として、「カッコウ」に目を付けられたための災難で、「托卵」ということに未経験だったオナガは良いように利用され、殊に西日本ではほとんど姿が見られなくなったといいます。
カッコウのヒナはセッティングされた通りにオナガの卵たちよりも少し前に孵化し、この世にあらわれて一番初めにすることは・・・仮の兄弟たちの入った卵を背中に当ててエンヤコラ。一つまた一つ、巣の縁まで持ち上げて押し出してしまうという仕事です。勿論、仮の兄弟たちは落下して潰れてしまいます。
羽毛も生えてない鳥肌、眼も見えているのかどうか。こんな時期になされる鬼気迫る奮闘で、兄弟のことごとくを始末するまで止めはしません。
だまされた里親が運んでくる餌を独り占めするためにすることですが・・・カッコウは「半端ない」のです。
数十年間、関東でもオナガの個体数は減少しました。
たまに見かけることがあっても、ぼそぼそに毛羽立って、すくみあがっているかのようでした。
一族の命運は尽きるかというときに・・・
オナガはカラスの親戚であるだけに、学習能力が高く、団結して行動する能力もなかなかのもののようです。
何が起こっているかを理解するようになったのです。
あわやというタイミングで、エナガたちは巣に産み付けられたカッコウの卵を見分けて、つまみ出してしまう眼力を備えることができました。
さらには、グループで見張っていて、カッコウがあたりに近づくと激しく攻撃して駆逐するようになったといいます。
あやうく逆転のV字回復。進化というものは驚くほどの短期間で進むことがあるという実例だとされています。
そうしたわけで、この頃また、オナガにお目にかかれるようになりました。
冬の終わりの頃に私が出会った群れは、互いに見張りを置きながら悠々と水を飲み合っておりました。長いシッポを振り立て振り立て・・・。
一時期よりも色つやが良くなり、体格もがっしりしてきて、群れは自信に溢れているようです。楽しそうです。
私にはそのように映ります。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。