真冬のあさまだき、東天が紅く輝き始めるころに多摩川のへりに立ちますと、まだネオンや街燈の色を映してちらちらしている水面に、なにやら生き物が居る気配がしました。
何だろうと怪しみながら撮ったものがこれです。原版のままだとほとんど何も見えませんから、明るさを増して示すように調整したものです。
しだいに明るくなってきますと・・・
はっきりと写っていませんが、魚をくわえて羽ばたいているのがいました。ガンやカモの類はこれだけ大きな魚は食べないと思います。
その頃の東の空は、ようやく・・・
中洲に上がって、石の間をさかんについばむものも出てきました。こういうことはカモの類には向いてはいません。逞しい脚をしており、指の間を完全につないではいませんが、水掻きがあるようです。
さて正体は・・・。全体が黒、クチバシと額がはっきりした白、というのがトレードマークです。
「オオバン」です。
同じクイナの仲間に「バン」という鳥がいますが、額とクチバシが濃い赤色をしており、沼地や田を好んで、大きな声を「キョヶ グルルッ・・・」と轟かすので、「田んぼの番をしてくれているのだ」ということから「バン」と名付けられたのだそうです。
そのバンよりも少し体格が大きいことからオオバンと呼ばれるようになったとされていますが、私の印象では「番」よりも「晩」です。
「鳥目」といって、鳥類は夜になると視覚が利かなくなるそうですが、どうしてオオバンは暗い水面下の魚を捕えることができるのでしょう。分からないことばかりです。
黒と白だけで決めているところが端正であるとして、外国では評価されることがあるそうです。全体にずんぐりした姿ととりわけ赤い目とが相乗しあってか私には端正とは印象されませんが、自信はありません。これも分からないことです。
魚をくわえている写真に有るように潜水が得意ですが、水に潜ることが得意な他の鳥に見られるのと同じように、そうした分だけ空を飛ぶ能力が殺がれているようで、水から飛び立つときにはかなりの助走を要しています。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。