清流の麗人 「キセキレイ」

 「黒と白とで装うのは男性の特権でしてよ。あなた、素敵ね」と言われた男がいます。大英帝国が輝き渡っていたころ、一人の青年が艱難辛苦に耐え、粉骨砕身を続けて、海軍士官となり、艦長になり、艦隊司令官になり、貴族に列せられ、ついには伯爵令嬢と結ばれるという冒険物語の中の話です。
 言われたのは、軍装整えたサー・ホーンブロア艦長。言ったのはバーバラ令夫人。これを鳥に配すれば、艦長が「セグロセキレイ」、令夫人が「キセキレイ」ということになります。

 私も素敵じゃなくてはね

 ここでも、日本で見られる三種のセキレイの特徴をまとめた図を挙げておきます。

 胸から腹にかけて、あっさりと黄色であることから「キセキレイ」と呼ばれ、他のセキレイとの見分けは容易です。端正な小鳥です。
 石や岩のごろごろした渓流を好み、長い尾をリズミカルに上下させるのがいっそう目立つので、「イシタタキ」と呼ぶ地方もあるそうです。フライングキャッチも得意で、「チチン チチン」と澄んだ声で鳴きながら、あちらこちらを移動します。下の二枚は、久しぶりの多摩川流域の大雨のあとのもので、いくらかとまどったような様子がうかがえました。

 セグロセキレイと同じように、川筋を離れることはあまりせず、ヒトへの警戒心がけっこうに強いようです。キセキレイも最近、個体数を減らしつつあるとされています。

 

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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