バン 水かきの無い水辺の鳥

ゆったり 静かな水辺で

「バン」は、ハトよりも少し大き目の「水辺の鳥」で、池や湿地や水田などに棲み付いているのが見られます。
「クイナ」の仲間であるだけに、陸に上がった姿は脚が長くてスマートに見えるのですが、水に浮かんでいる様子はずんぐりむっくりしており、動きもゆったりしていることが多いようです。

「バン」というのは「番」のことで、「クルルー」と鳴いて水田などの番をしてくれているということから付けられた名前だそうです。
が、いつも見張っていて、怪しいものが来たら警報を発するというような殺気立った感じではなく、棲み付いたように近くの水辺の茂みに居て、ひっそりと見守ってくれているようだという雰囲気を掴んでのことだと思われます。つまり「番犬」「見張り番」「寝ずの番」とかではなく、「お留守番」「別荘番」といったふうなのです。

泳ぎが下手

水に浮かんでいる様子は、クイナというよりもカモの類に似ています。全体に青味を帯びた黒褐色の印象で、特徴的なのは、広い額(額板)とクチバシの赤色(冬季には黄色)と、脇腹の白い線です。

広い水面や流れのある所に出ることは少なく、群れることもなく、静かな池の草陰などを好み、首を前後に振ってぎこちなく泳ぎます。
高く浮き上がってスムースに動いているなと思うと、水面下に沈んでいる小枝や水草の上を伝っているのが知れたりします。苦笑ものです。

それもそのはず、足に水かきが無いのです。

広い分布

つまり、バンは水辺の鳥ですが水鳥ではなく、水を好むクイナなのです。
おっとり不器用に見えますが分布は驚くほど広く、オセアニアを除く全世界(ユーラシア、アフリカ、南北アメリカ)の温帯と熱帯に分布しており、冬には寒冷を避けて暖地へ移動します。
おっとりしているように見えますが、環境への適応力が高いことは、最近の公園などでヒトから餌を貰うことを覚えつつある個体が増えていることからもうかがえます。

オオバンに比べると

同じクイナ科の鳥に「オオバン」という水辺の鳥が居ます。
バンよりも一回り大きく、全身真っ黒のところ、大きな額(額板)とクチバシが白くてくっきりと目立ち、西欧ではなかなかに洗練されたセンスだと評されるのだそうです。

バンと違って、オオバンは「弁足」という木の葉状の水かきを備えています。
それだけ泳ぎは上手で、広い水面で群れを作って盛んに活動します。例えば多摩川では、ちょっとした流れがある川面でも嬉々として餌を探しているのがよく見られ、それも近年多くなっているようです。

水かきがあるので、羽ばたきながら水面を助走して飛び立つことが出来、沢山のオオバンが次々と離水してゆく様子は、なかなかに胸躍るものです。

そして、オオバンはバンよりも更に広く分布しています。
北極圏もすれすれのアイスランドから、赤道を跨いでオーストラリアやニュージーランドまで、全大陸に及びます。
極寒から酷暑まで、環境適応力が大きく、最近の地球温暖化に伴って棲息区域を広げつつあるようです。

ともに繁栄を

バンは控え目に、オオバンはいくらか行動的に。ともに地味に・・・。
揃って、さらに広域に適応できますように。