寒風吹き抜ける枝の上で
「ノスリ」はトビよりも一回り小さい猛禽類です。猛禽類ですが少し変わったところがあり、他の鳥を狙うよりもネズミやヘビやモグラの方を獲ることが多いそうです。
あまり積極的に鳥を追うことがないので、昔の鷹匠たちには「役立たず」とさげずまれていたようですが、これはヒトの都合による一方的な評価であって、ノスリには申し訳ないことです。
ネズミなどを獲るのは名人で、長時間ひっそりとチャンスを待っていて、「野をする」ように急襲することから「のすり」と呼ばれるようになったという説があります。また空中でホバリングしていて逆落としに襲うことも有名です。
2月の寒風吹き付ける枝の上で辛抱強く獲物を待ち続けているノスリと、たっぷり20分以上を付き合わされたことがあります。池を間に置いて遠く離れた観察小屋の中でしたが、こちらが寒さに耐えられなくなってしまったものでした。
あちら見て こちら見て
膨らんで 毛づくろいして じーっと待つ
うん! 行くか!
無駄だな
またの日
はるか向こうの林の中に一点、白っぽいものが気になったのでズームアップして見ると、はたしてノスリでした。やはり地蔵さんのように長い間じっとしていました。
胸に特大のペンダントを掛けているような茶色の模様が特徴です。顔も背中もいたって地味な茶色が基調なので、これを馬糞に見立て、地方によって「マグソダカ」と呼ばれるようです。ノスリにとって失礼ではあるけれど、同時に誉れでもありましょう。農耕馬や運送馬は滅んで、馬糞を見るのは難しくなってしまったのに、ノスリは生き延びているのですから・・・。
飛翔すれば華麗
下から見上げると、白が基調で美しく、胴に淡褐色の帯が見え、扇状に広げられた尾羽も特徴です。
ノスリと良く似た猛禽類に「ミサゴ」があり、同じように空中の一点でホバリングしてもっぱら魚を襲いますが、こちらも翼の下面は白く印象されます。
翼の下面の白さを比べると、ノスリ>ミサゴ>チョウゲンボウ>オオタカ>トビ>カラスとなると思います。ノスリとミサゴは獲物の上空にとどまってタイミングを計るわけですから、背景の空に溶け込んでいる方が有利なのでしょう。
それに対してカラスやトビは、動き回るものを狙うことはまずありませんから、下面が白い必要はないわけです。オオタカやチョウゲンボウはそれ等の中間ということになります。それぞれの棲み分け・・・自然(進化)は全く良くできています。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。