中国から渡ってきた「花札」の図柄から「梅にウグイス」という取り合わせが定着してしまっていますが、これはもっともなことなのでしょうか。
梅は早春に咲くので、ウグイスがきれいな声で鳴きだす晩春の頃とは、時期がずれてしまっています。それに、ウグイスは雑食性ですが、果汁や蜜は好みません。梅の花の蜜を目当てに訪れてくるのは「メジロ」の方なのです。「梅にメジロ」はよく見られる光景です。そんなことからも、ウグイスとメジロはよく間違えられるのでしょう。
蜜じゃないよ 虫を捜しているんだよ
ウグイスは緑がかった暗い茶色をしており、全体にシャープな身体つきをしています。メジロの方はくすんだ黄緑色で、丸っこく、可愛らしい印象。なによりも、目の周囲が菊の花のように、くっきりと白く縁取りされております。
写真を見れば一目瞭然です。
こちらからは 丸見えですよ
ウグイスは警戒心が強く、目の前の藪で、澄んだ鳴き声がとどろいているものの姿は見えず、あちこちする黒っぽい影を追えるのは運のいい方ですから、写真に収めようとするとなかなかに大変です。葉の間から目玉だけがのぞいている写真を見てください。
鳴き方が「ウー グイ」と聞こえるなんて信じられる?
「ウグイス」という名前は、その鳴き声からきているのだそうです。奈良や平安の時代には「うぐひす」あるいは「うくひす」と書いていましたが、その発音は「ふくぴちゅ」に近かったというのです。「フクー ピチュ」というと、ウグイスの泣き方として通らないわけでもないという気がします。変わったのはウグイスの鳴き声ではなくて、ヒトの表記と発声の方らしいのです・・・?
百万石も何のその
江戸時代には「鶯品定めの会」というのが盛んで、それぞれに手塩にかけた沢山のウグイスを鳴き競わせ、これに一等賞を取るのはたいそうな名誉だったそうです。ある年、本郷に住む味噌屋さんが、近くに江戸屋敷を構えている加賀百万石前田の殿様が出品したウグイスを打ち負かして優勝したということで興奮し、「鶯や百万石も何のその」という句を作って評判になったそうです。よほど痛快だったのでありましょう。
こんな話にふさわしいような、ちょっと変わった写真を挙げておきます。ひょっと見、ずんぐりしていてジョウビタキのメスではないかと疑われますが、目を通るグレイの線、お尻のあたりから下に赤みがかった色味のないこと、脚の色・・・などからウグイスなのです。とぼけて見えませんか。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。