時は春 「ヒバリ」 Ⅰ

 「ヒバリ」という呼び方は「日晴」から転化したもののようです。ヒバリと聞くと、真っ先に高校(?)の教科書に載っていた詩を思い出します。

    春の朝(あした)

  時は春
  日は朝(あした)
  朝(あした)は七時
  片岡に露みちて
  揚雲雀(あげひばり)なのりいで
  蝸牛(かたつむり)枝に這ひ
  神、空に知ろしめす
  すべて世は事も無し

 ひろびろとして、癒される詩です。今、調べてみると、英国の詩人ロバート・ブラウニングの原作を上田敏が訳したもので、明治38年(1905)に「海潮音」に所収されているもののようです。日露戦争の最中に、この国にこのような一面があったかと思うと、なんだかホッとします。

揚雲雀でなくてごめんなさい

 さて、雲雀は「スズメ」よりも一回り大きく、河川敷などの開けた場所を好みます。春の繁殖期には高々と舞い上がり、空の一点でホバリングしながら長々とさえずってテリトリーを宣言するのですが、あいにく私は空中での雲雀をまともに捉えたことがありません。下の幾枚かは、河原の杭の上で、横を向いていたり、まっすぐこちらを見ていたり、少し怪しんだりしているものです。

複雑な鳴き方

 先に挙げた詩には「朝は七時」とありますが、これは少し遅いのではないかと思います。ヒバリが天空の一点で複雑なさえずりをして見せるのは、私の経験では早朝も早朝、まだどこそこに夜明け前の暗みが残っている頃に限られております。この写真は、空さえあまり明るくないせいかピントが合っていないしろものですが、ヤッコダコのようなホバリングの仕方がからくもうかがえるようです。「ピリリ ピリリ ピチュピチュ ピリ チリリ チリ チリ ピリリ ピリ・・・」などと複雑に続きます。

ヒバリのさえずりに似た笛

 バードコールと呼ばれる笛を知っていますか。ここに有名らしいのを一つ。ご覧のように、100円玉と比べるといたって小さなもので、文字が浮かんでいるツマミのようなものをグリグリと回すとヒバリのさえずりに似たような音が出ます。錫と鉛の合金であるらしい金属と木の筒とがこすれ合ってきしむ音ですが・・・。文字はオーデュボン・バードコール(AUDUBON BIRD CALL)と読め、裏側から米国コネチカット州のニューリントンという町で作られていることが分かります。 もう一つ、私の自作のものですが、クロチクを材料にした華奢な笛です。吹く時に、先端に指をあてて速くいろいろな調子で動かすほど、ヒバリのさえずりのような音が出ます。先端を見ずに漬けながら吹くと、カナリヤの鳴き声のような柔らかい音色になります。 どれもこれも、効果につては一定の評価は無いようです。バードコールといいますから、鳥が寄って来るかというと、そのあたりがあやふやで、「珍しがって、朝早くにイヌの散歩やトレーニングをしているオジサンやオバサンが寄ってきた」というような話の方が多いのです。
 我と思わん方は、自分でいろいろと試作してみてはいかがでしょう。思いがけない結果が待っているかもしれません。
 下の2枚は、それぞれ1月4日と1月7日に撮られております。春も盛んなころに比べると、なんといってもくすんで見え、いかにも「冬のヒバリ」といったところです。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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