真夏の多摩川中流の日の出は5時20分前後です。
しらしら明けの頃、残った星がいくつか瞬いて見える頃はさすがに涼しく、たっぷり夜露を乗せた草々をかき分けながら岸辺に立つと、下流から上流へ、つまり東から西へ向かう「カワウ」と「ダイサギ」の大群が見られます。このとき、伸び切った雑草がけっこう硬く横に張り出しているので、これらに弾かれて川の中に転がり落ちないように注意する必要があります。
まずは「ダイサギ」たち
ダイサギはカワウよりも先に動く傾向があるようです。身体が白いので背景が白っぽいとコントラストが付きにくいのですが、空に明けの色が滲むようになると・・・これらはいずれも日の出の直前に撮られたものです。
大きいだけに、2羽・3羽だけで飛翔していても見応えがあり、群を作って飛ぶと「暁の出撃」といった迫力です。長い首をS字状にたたみ、脚はしっかりと伸ばし、ゆったりと羽ばたくのが特徴です。
ついで「カワウ」たちの大編隊
日の出前後になると、ダイサギよりも少し遅れてカワウたちの移動が始まります。カワウは、水に潜り、空も飛ぶという両刀使いですから、飛翔の方は専門としていないわけで、せわしなく羽根を動かして直線的に突き進むという感じがします。
大空に又わき出でし小鳥かな 高浜 虚子
湧くように現れては上空で変幻自在に編隊の形を変える小鳥たちの軽快さが目に浮かびますが、カワウたちは次から次へと何百羽と上空を通過するものの、その途中で鮮やかに隊形を変えるといった器用さは感じられないものです。魚の居るところにまっしぐらです。
時に1羽だけ、みんなとは全く違った方向に、突進してゆく個体が見られます。カワウにも、奇人や天才がいるのでしょうか。
掃除屋「トビ」登場
それにしても、あれだけの「サギ」や「ウ」を養えるだけの生態系を抱えているというのは多摩川の驚異です。水鳥たちの数は年々増えてゆくように思われます。
ゴミも出るでありましょう。良くしたもので、ほとんど毎回、「トビ」がひっそりと後を追っているのがみられるものです。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。