軽快・才気のシジュウカラか 熟練職人肌のヤマガラか
鳥にも結構に頭の良いのが居ます。
誰にも文句のない堂々の金メダルはカラス。
道具を作って改良する、ヒトの顔を識別して好ましくない奴を避けたり攻撃したりする、数を数えられる、などなどといった風で、5~7歳の子供レベルの知能を持っているとする研究者もいます。
銀メダルに輝くのがシジュウカラ。
シジュウカラ語を使う、ということでこのところ注目されています。「集まれ」「上を警戒しろ」「地面が怪しい」というようなことを鳴き方やその順序を変えることで伝え合っており、その知的能力は2~3歳児に匹敵すると言われています。 樹のてっぺんから根方の地面まで活動の範囲は広く、藪や石の間をくぐり抜けて飛ぶというような敏捷性についても定評のあるところです。
銅メダルにランクされているのがヤマガラ。
容器の蓋開けなどの操作学習が速い、試行錯誤でコツを覚える、器用な実務型、などと纏められていて、1~2歳児のレベルに相当するとされています。
ヤマガラの生活の知恵
秋に自作の餌台とツクバイモドキ(水飲み場兼水浴場)を庭に置いたので、この冬は小鳥たちが訪れて来てくれるようになりました。
しばらく眺めているうちに、シジュウカラとヤマガラの食事の仕方に違いがあることに気が付きました。
ともに私たちに馴染の深い小鳥たちでスズメ目シジュウカラ科に属し、餌台に置いたヒマワリの種子を好みますが、殻を割って中身を取り出すやり方に違いがあるのです。
御承知のように、ヒマワリの種子はラグビーのボールを扁平につぶしたような恰好をしています。
シジュウカラは種子を横に置いて固定し、腹をつつき壊して中身を食べる。
いくつかの動画と写真を挙げますが、私が見ている限り例外はありません。ヒマワリの種子は結構に頑丈であるらしく、脳震盪を起こさないだろうかと危ぶまれるほどに手こずって、悪戦苦闘して、かなりの時間を要しています。
ヤマガラは種子を縦に立てて固定し、頭を打撃してぱっくりと割る。
一方のヤマガラのやり方を動画と写真で挙げますが、種子の合わせ目に沿ってすっきりと割れるだけに4・5回も打撃することで目的を達しています。シジュウカラよりも巧妙で合理的なやり方です。
扁平な種子を縦に固定するには、細まった下端を左右からしっかりと支えなければなりません。学習不足か、あまり殻の強くない種子と見極めてのことか、たまにシジュウカラ流に横腹を攻めている個体があります。そうした時でさえ、あまり手間を取らせていないことからも、ヤマガラの打撃力の強さが窺えます。いずれにしても実務的に器用で賢いのです。
打撃力の差はクチバシノ形にも
シジュウカラのクチバシはピンセットのよう ヤマガラのそれはタガネのよう
前に記したように、シジュウカラもヤマガラもスズメ目シジュウカラ科に属しますが、食性にはかなりの違いがあり、それがクチバシノ形の差になって表れています。ヤマガラの方が太くがっしりしています。
ともに雑食性とはいえ、シジュウカラの主食は動物系に傾いた虫などであり、片やヤマガラは植物系で硬めの木の実を好み、とりわけ秋口に実ったエゴノキの実を冬に備えて蓄えて置くという計画性は有名です。
早春に咲いたハナモモに来ているシジュウカラの動画を挙げますが、花蜜が目当てではなく、枝先に動き始めた虫をあさっているのが良く分かります。せわしなく移動しながらも囀りを止めないところも、軽妙で社交好きという特性が現れているようです。
やはり早春の大樹を叩きまわっているヤマガラの様子も見てください。小型のキツツキであるコゲラに勝るとも劣らない強打ぶりですが、これはおそらく木肌の奥に動き始めた樹液をほじくり出しているのだと思われます。
図のように、主食が植物系の鳥たちの嘴は植物の実を集めて砕くために太くて短く、主食が動物系の鳥たちの嘴は葉裏や襞に隠れた虫を摘まみ上げるのに適したように細く鋭いのが一般的です。

キツツキ類のように獲物を掘り出すといった食性のものは、ピンセットというよりもノミと言った方がふさわしく、モズやワシタカ類は獲物を襲撃して引き裂くために先端が鉤状に曲がっています。
と言ったわけで、ヤマガラのクチバシは一見ずんぐりして見えますが、その先端は御覧のように鋭く尖っています。それで打撃した所からぶれずに、タガネのようにはじき割ることが出来るのでしょう。

「ヤマガラのおみくじ芸」 驚くべき学習能力
ヤマガラは学習能力が際立って高く、人慣れもし易く、複雑な「大道芸」までも仕込むことが出来ます。「ヤマガラのおみくじ芸」というのが圧巻で、昔から伝えられてきた無形文化財級の技だと思うのですが、野生動物の保護ということから現在は途絶えてしまっています。
私の幼少の頃、木曽谷の「水無様」という女神の祭日の賑わいの中で、ヤマガラがミニチュアの神社に詣でておみくじを引いて帰るという芸を見たことがあります。等間隔にしつらえられた止まり木をちょんちょんと進み、銀色の小片を賽銭箱に入れ、小さな鈴を鳴らし、扉を嘴で左右に開け、おみくじを一枚くわえてちょんちょんと戻って・・・見物客の群がる喧騒の中で囲いも網も無しで・・・可愛らしさが、アセチレンランプの刺激臭とともに蘇ってきます。
教える方の根気も大したものだったでしょうが、教わる方にこそ、従順で質の良い辛抱強さと記憶力が必要です。小さな脳にそれが備わっているのです。

ヤマガラに推しの一票
シジュウカラには才気に溢れたコミュニケーション能力を使っての軽快な頭の良さが窺え、ヒトの職業に例えれば、少し飛躍しているかも知れませんが、ラジオパーソナリティーを連想させます。
一方のヤマガラには地味でじっくりした経験や工夫を積み上げるといった頭の良さが窺え、職業に例えれば、これもオーバーかもしれませんが、宮大工を連想させます。アナログな私には宮大工の方が推しです。
最初にあげたメダルの色に戻ります。カラスの金メダルは不動。時に憎たらしいことがあっても、オールラウンドな知力はどうにもならないところ。
その腕利きの職人のような能力を高く買って、銀メダルをヤマガラに。軽妙利発さを良しとして、銅メダルをシジュウカラに。
現場仕事に長くたずさわった私には、ヤマガラの資質が好ましく映るのです。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。