巨大なマツボックリ?
「この冬もトラフズクの群れが来ている」と教えてくれた人が居たので、早速、訪ねてみました。
多摩川の河川敷からわずかに離れて、剪定などの手を入れてない松の木があり、入り組んだ枝の間をすかすと、40センチもあろうかという巨大なマツボックリがむっくりむっくり・・・。
あちらこちらから見通すと、一つ、二つ、三つ‥…六つ。松の肌や枝によく馴染んでいて、どうしてもマツボックリです。
よく見ると、達磨さんのように首を沈めて寝ている生き物なのだと知れるものがあり、さらに待っていると、別の個体が目を開けてこちらをすかしています。とうとう、正面を伺うことが出来ました。
トラフスズク
「トラフズク」を漢字では「虎斑木菟」と書きます。「虎の斑紋と兎のような耳を持って木に棲むもの」という意味なのでしょう。
実際は、トラの模様よりも複雑で松の木の肌合いによく似ており、危険を感じた時に身を細めて針葉樹の幹にすり寄るという擬態を使います。
ウサギのような耳をしているといいますが、実際の耳は別にあり、それと見えるものは羽角と呼ばれる羽の束で、これも擬態のために使われるということです。
トラフズクはこの惑星の北半球の中緯度地帯に広域に分布して、主に周年棲息しますが、寒冷地に分布する個体は冬季には南下し越冬します。こうした広い適応力には訳がありそうです。
神秘な狩り ハンター
夜行性であり、夕方から夜にかけて活動し、ネズミやモグラを好んで食べます。
松の木の下を探してみると、良くこなれてはいましたが、ネズミなどの毛が混じっているらしいペレットがいくつか見つかりました。
昼間は、大きな達磨ボックリのようにうつらうつらしているとしか見えないのに、夜間とはいえ、昼夜を分けずにヒトが活動する地鳴りのようなゆらぎの絶えることのないこのあたりで・・・どうやってネズミやモグラを狩って獲るのでしょう。
ビル、街路樹、ヘッドライト。自動車、電車、さまざまな家電などから大量に排出されるモーターの振動や電磁波・・・。
雑音の雪崩の中から、ネズミやモグラの発する特有でかすかな振動を聞き分け、邪魔をする波動の洪水の中から、地表や地下の獲物を手繰りだすことをしているのです。
おそらく、私たちの感ずることのできない情報を駆使する能力を備えているに違いありません。それが広い分布を可能にしているものと思われます。
とすると、トラフズクの夜の飛翔は、達磨ボックリとはまるで違うはずで、ひよっとすると幽鬼のようであるかもしれません。見たいものです。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。
誠に、大きな松ぼっくり…梟は鳥類のなかで最も好きな種なのですが、こうした木々のなかに暮らす姿を拝見した事は無かったです。トラフズクも、地元で馴染みある鳴き声の主なのですが姿を見たことはありません。いつか静かに拝見してみたいものです。
達磨ぼっくり、ずんぐりした姿に納得の可愛らしい呼び名だと思います。
本当に、どうしたわけか、フクロウは人気がありますよね。
童話や絵本などには、知恵をいっぱいに蓄えた老賢者として登場することが多いではないですか。
夜は何をしているか分からないほど動き廻っているらしいのに、昼は達磨ボックリを決め込んでいるところなどがイミシンに感じられるのでしょうか。
ヒトの消費の仕方から、この頃はカラスと並んでネズミが増殖しているようですから、フクロウも市街地に近付きつつあるのではと思われます。
ひょんなところに群れているかも知れません。情報を頼りに、是非、見つけて見てください。