御馳走を探す小鳥たち…キュート派1 エナガ

小枝を渡ってゆく綿毛

白っぽい綿毛のかたまりのようなものに、鉛筆の芯ほどのクチバシをチョンと付けて…群れのそれぞれが小首をかしげ、羽を一閃させては、あちらと思えばもうこちら、「チュリリ・ジュリ・チュリリ〜」とつぶやきながら、それぞれに忙しげに枝から枝を飛び移ってゆく……かわいいのです。

体長13.5㎝というからスズメと同じほどの大きさなのですが、重さはスズメの24gに対して8gという3分の1の軽さ。8グラムといえば、一円玉8枚ほど!
綿毛のかたまりから突き出している尻尾の長さが体長の半分を超える7.5㎝もあって、これが小さなヒシャクに付いている長い柄のように見えることから「エナガ」……軽いわけです。

意外な能力と習性

日本の野鳥の中でもトップから二番目に軽いのですが、可愛らしいばかりかというと、とんでもない。他には真似のできない資質を備えております。

巧みな巣を作る
大量のクモの糸を集めて来て精緻に苔を絡めて編み上げる巣は、表面が木の肌をした壺のように見え、この鳥にしては大き目(横10㎝×縦15㎝ほど)で、たいそう丈夫で断熱効果の高いものです。
木の股にしつらえられた壺を見てください。それで、この鳥はタクミドリ(匠鳥)とも呼ばれることがあるほどです。頭抜けた技量と云えるでしょう。

エナガと同じように小さくてキュートな小鳥にメジロがありますが、その巣を見てみましょう。小枝の詰んだところを利用して、やはりクモの糸でコケや草の茎を繋いで工作していますが、良くは出来ているものの、エナガの巣に比べれば小さくて(5㎝×5㎝ほど)粗雑です。

粗雑と言い切ってしまうのは間違いかも知れません。エナガが巣を厚くして断熱を計っているのに対して、メジロは巣をスケスケにすることで放熱効果を狙っているのかも知れません。このような巣で5~6個もの卵から孵ったヒナたちが育つと、巣立ち前には、巣は溢れかえってパンパンに伸び切りますが、大丈夫、はち切れることなく最後まで持つのです。クモの糸は鋼線の4〜5倍も強いそうですから頷けることです。このことから逆に、エナガの巣の頑丈さはさぞかしと思われます。

家族群が協力して子育てをする
エナガの巣が丈夫だとは言え、カラス、イタチ、ハクビシン、ヘビなどに襲撃されると大きな被害を受けることが少なくなく、実際、エナガたちが無事に子育てを終えるのは3分の1程度にとどまるという調査があります。
そのせいかどうか、エナガたちは巣立ったばかりのヒナをグループで育てる習性があり、そこでは、繁殖に失敗したカップルが成功したカップルのヒナたちに給餌することに協力するのです。

子育てをする熱意には並々ならないものがあるようです。
大きな巣だとは言え、抱卵するときは長い尾が邪魔になるわけで、巣立ちが終わった後まで、メスの尻尾の先が反ったままに残っているのを見掛けることがあります。

軽快可憐な動き

小さな虫たちのうちでも殊にアブラムシが大好きですが、春先には木の幹などから直接に樹液を吸うことがあります。

軽快なリズムとともに楽譜が動き回るようにも見えて可憐ですが、多くの都道府県でレッドリストに載せられており、東京都でも「準絶滅危惧種」に指定されています。
枝にびっしりと並んで止まることがあり、それを「エナガ団子」というのだそうですが、私は見たことがありません。
お目にかかることができるでしょうか。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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