ハヤブサとならんでインコの仲間
「チョウゲンボウ」はハトほどの大きさの猛禽類です。
最近のDNA研究から、ワシやタカなどよりも、インコやスズメに近い系統であることが分かってきたとのこと。
あの「ハヤブサ」も同じなのだそうです。ハヤブサといえば昔も今も、敏捷で精悍なものの代名詞のようになっています。昔々、高性能を誇った戦闘機「隼」。いま現在、宇宙で任務を遂行しつつある小惑星探査機「はやぶさⅡ号」といったとおりです。
ひらひらと舞い 華麗なホバリング
チョウゲンボウは、ハヤブサほど高速では飛翔しません。ひらひらという感じで飛び、しばしば華麗なホバリングを見せます。 先端にアクセントのある尾羽を扇状にひろげて揺らいでいる様子は、地上の一定範囲をスキャンしているようにも見えます。齧歯類(ネズミなど)の尿が紫外線を反射して光るのを捉える能力があるのです。
翼の下面が白っぽい ホバリングが得意ないくつかの猛禽類と同じ
上空でホバリングしながら獲物を探したり、攻撃のタイミングを測ったりする猛禽類の代表といえば、ミサゴ、ノスリ、チョウゲンボウ、となりましょう。どれも、下から見上げられたときに目立たないように、翼の下面が白っぽいのが共通しています。
チョウゲンボウ
ミサゴ
ノスリ
トビとならんでカラスの敵役
このカテゴリーのトビのところでも書きましたが、さまざまに推測される理由から、トビは昔からカラスにストーキングされ続けており、仲間との連携が上手いカラスとの空中戦から、へとへとになって抜け出すトビの様子はしばしば見られます。
チョウゲンボウも、カラスに良くは思われていません。休んでいたところを不意打ちで襲撃される瞬間を、私も目の当たりにしたことがあります。びっくりするチョウゲンボウの様子を見てください。
チョウゲンボウは、崖の穴や窪み、最近はビルや橋などのちょっとした空隙に巣を作るのですが、しばしばカラスの作った巣を利用するようです。カラスの巣はもともと精巧なものとは云えそうもないのに、どうしたことか、チョウゲンボウはカラスの作ったものを好むようです。それでカラスに憎まれるのかも知れません。
カラス・トビ・チョウゲンボウ・ノスリに共通したもの
この4種の鳥類は、それぞれに個体数を増やしつつあります。カラスが筆頭といえるでしょうが、ヒトが日に日に拡大変化させてゆく活動の副産物ともいうべきものを、自分たちの繁殖に有利な環境として利用してゆくという応用力に富んでいるところが共通しています。
カラスやトビは、「街の掃除屋さん」と呼ばれることがあります。日本は食料の自給率4割ほどでありながら、「食品廃棄大国」とランクされていますから、残飯ばかりでなく、間接的に増殖するネズミなどの小動物が、一部の野鳥たちにとっては有利な材料となるのでしょう。
「宮沢賢治」の小品に「カラスの北斗七星」というのがあり、その中で、群の全体を「カラスの艦隊」、一羽一羽を「砲艦」となぞらえています。これがピッタリに思えるほど、カラスの活動が組織的に見えることがしばしばあります。
一強のカラスに対して、対峙するのがトビ、チョウゲンボウ、おそらくノスリ。ノスリが数羽のカラスに追われている写真があったように思われるので探してみます。
カラスに追われるノスリ?
カラスに負けるなチョウゲンボウ 華麗に舞え!
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。