フラップ・ダック鎮魂


ミモザ

 三年ほど前のこと・・・。幹が小指ほどの太さのミモザの苗を、娘が庭の東南の隅に植え足した。マンションに住んで、鉢植えのものばかりを並べているのに物足らなくて、土に根を張って立つ木を育ててみたくなったのであろう。
 ミモザは、春の先頭を切って黄色の小花をたわわに咲かせる楽しい木であるけれど、めきめきと大きくなり過ぎることから、よほど大きい庭でないと付き合うのは難しい。

 はたして、ミモザは急速に成長した。枝が道路側にはみ出るまでになってしまったのは剪定すればどうにかなるものの、結構に太くなった幹そのものが風に煽られると塀に当たるようになった。そもそも、それなりの間を考えて植え付けるべきだったのである。
 三年が経ったこの春、掘り上げて鉢植えにすべきだということになった。ミモザは植え替えが難しいと言われているけれど、細根を残すようにすれば大丈夫だろうというわけである。

出土

 晴れた休日に娘夫婦がやって来て作業を始め、注意深くスコップを使ったが、直根が深く伸びていてなかなか捗らない。探るように更に掘り進めた。
 と、スコップを使っていた娘の夫がふと手を止め、刃の先に引っ掛けるようにして、何かを深みから地面にさらけ出した。

 三人そろって息を呑んだ。春の日を受けて横たわっていたのは、泥にまみれてはいるが完全な形を保った腕時計だったからである。地面の下、それも深くに腕時計・・・。奇妙というかミステリアスな取り合わせである。
 が、その腕時計の特異なデザインを目にした時、私の記憶がよみがえった。土ごと掴み上げてその場を離れた。

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