ヒトは群れる。現生人類がようやく発展の道をたどり始めたころからの集団のありようの一面を、次のような順序で考えてみたい。
1 権力関係の発生と複雑化
2 軍隊の怖ろしさ
3 アドルフ・アイヒマンは特異な存在か
4 心に巣食う闇の機序
5 うちなる隷属性を克服する人
6 まとめ
1 権力関係の発生と複雑化
共同で狩りをしたり集団同士がぶつかったりすることを繰り返したりしているうちに、「あの人に付いているとうまくゆくことが多い」といった手続きでリーダーが選ばれるようになる。
はじめは、狩りの手配、魚介採集の場の選定、天候の見極め、他集団との折衝などに高い能力を示す人、つまり「原始的なカリスマ性」を備えた人を中心にしてまとまったであろう。次第に決定する者とそれに従う者の関係が育ってゆく。
リーダーのカリスマ性が強ければ強いほど、納得のゆく「上位目標」が次々と示され易く、集団は周囲を取り込んで大きくなってゆく。家族、一族、部族、民族、と大きくなった集団は次第に特有な考え方やしきたりを持つようになる。同じような段階を踏んで、それぞれに固有の文化を持つに至っている集団同士が遭遇した時の葛藤を解決するのはいよいよ複雑になる。混乱を収める手段は思い切ったことを要するものになってゆきやすく、価値観の相違ともなれば決定的なもので、互いに存亡を懸けた衝突となりがちであろう。
「原始カリスマ」は「軍事カリスマ」となり、軍事カリスマは、そのきらめきを保つために、かならず、「血統カリスマ」「伝統カリスマ」「制度カリスマ」を目指す。集団をできるだけ強固な「命令する者と服従する者」の構造の下に置こうとする。 “うちなる隷属性に溺れるヒト それを克服する人 克服を目指す人” の続きを読む
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。