神戸連続児童殺傷事件 Ⅹ 「社会で」

1 逆風の中での贖罪

 神戸連続児童殺傷事件の犯人である元少年は、6年半の施設内処遇を経て医療少年院を仮退院した。少年事件については少年法の理念から出院の情報などは本来は守秘されるところ、被害者遺族などの要望に応えての特例にするとの法務省の判断で、出院の日時が開示された。
 仮退院が報道された直後から、インターネットを介して情報が飛び交い、掲示板には特定のコーナーが出現し、その日の夕方までに投稿は数千件に達した。投稿では、元少年の氏名や事件発生当時の写真と称するものを載せたり、新しい居住地を臆測して自治体名や地域の名前を挙げたりしていた。これに対し法務省は、「プライバシーを侵害し、社会に不安を広げ、平穏で円滑な社会復帰を阻害する人権侵害行為である」として掲示板開設者に削除を依頼した。
 一方、「本人が更生できるかどうかは、自分のペースで生きられる条件がどれだけ整うかにかかっている。周囲はできるだけそっとしておく方がよい」といった静穏な捉え方もあり、つまるところ、元少年がどのように受け入れられてゆくのかについては、社会全体のありようにゆだねられることになった。 “神戸連続児童殺傷事件 Ⅹ 「社会で」” の続きを読む