6月中旬の良く晴れた日、何時ものように子犬と連れ立って近くの公園に行きました。
木陰に入って真夏のような日差しを避けていると、ふと、眼の前の柵の鉄パイプに何やら小さなコンペイトウのようなものが付いているのに気付きました。3つ4つあります。何だろうと訝しんでいると、その1つがチコチコチコと動き始めたのです。
私のカメラは望遠仕様なので近くのものを接写するのは苦手なのですが、精一杯にクローズアップした動画がこれです。
チコチコ歩いて行って1匹のアブラムシのようなものと出会い、一旦離れて何を思ったか、後ずさりして挨拶。その様子がなんとも可愛らしい!
腕時計と比べてみると分かるとおり、綿菓子のかけらのように見える全体は大層小さいのですが、精々アップしてみると、お相撲さんのように結構に踏ん張っているのが分かります。それがまた可愛い。
ちょっと腕時計を乱暴に動かすと・・・ピッ・・・どこかに跳ね跳んでしまいます。脚を踏ん張っているのは、いつでも瞬発できるための心得なのでしょう。
顔が写っている写真もあります。
家に帰って調べてみると、すぐに分かりました。「アオバハゴロモ」の幼虫なのです。成虫の写真を引用させてもらいます。
そういえば、まんまるな眼つきや透き通ったような脚つきが、大人と子供で似通ったところがあります。誰にもお馴染みの昆虫で、アオバハゴロモという名前は、青みがかった羽衣を纏ったように綺麗だというところから付けられたものでしょう。体長6~10mmほどの大きさで、所によって「シロコババ」「ハトムシ」「ポッポ」などと呼ばれるそうです。
ハゴロモと言えば天女が羽織るものと決まっていますが、アオバハゴロモの学名はGeishia distinctissima Walkerとされており、ラテン語では「とびきりの芸者さん」というような意味でありましょう。名付け親であるWalkerという学者の何やら訳ありの思い入れが窺えます。
アオバハゴロモの幼虫たちが例外なく背負っている綿穂のようなものは、自分の尾の端から分泌した蝋物質であり、それらが集団をなして広葉植物の茎に取り付くことが多いので、その部分が真っ白な粉まみれになって目立つのが普通なのです。 どうしてわざわざ目立つようなことをするのだろう。
どうしてまた、私と子犬が出会ったように、歯も立たない鉄パイプの上で運動会をするのだろう・・・ただ可愛らしいと思うだけで、何も分かりません。
チコチコ頑張れ!
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。