「オナガ」は全長40㎝近くありますが、名前の由来の通り、尾がたいそう長いので、身体だけの大きさはムクドリぐらいです。
頭に黒いスイミングキャップを被っているように見えるほかは、全体にくすんだ水色に印象され、尾をなびかせるようにして枝を縫って飛ぶ様子はスマートで舞うように感じられ、ほかの野鳥との区別は容易です。
スマートさに似合わず「ギューィ ゲーイ ギー」などと鳴きかわすので、姿とはちぐはぐな感じがしますが、声からも察しられるように、カラスの親戚なのです。
不思議な盛衰
オナガについては不思議な盛衰が観られています。
1970年代までは、本州全土と九州の一部にさかんに棲息していたのですが、1980年代以降になると、西日本での繁殖が観られなくなりました。わずか10年ほどの間に日本の半分から姿を消すとは・・・いったい何が起こったのでしょう。いろいろな説があるようですが、決め手はないようです。
カッコウを巡る物語
その説の一つを、このブログの野鳥のカテゴリーの中に「カッコウを巡るオナガ・モズ・ホオジロの物語」として記事にしたことがあります。進化というものを絡めて、「遺伝か環境か」を考えさせられる話ですから、目を通していただければと思います。
1970年代、環境の変化に伴って、オナガが低地から標高の高いところまで進出したところ、オナガとは反対に高地から低い地域へと広がって来ていた「カッコウ」と棲息地域が重なり合うようになりました。それがどうしたの、というような話ですが、これがオナガにとって予期もしない災難をもたらしたのです。
カッコウの「托卵」ということに未経験だったオナガは良いように利用され、その結果、オナガの個体数は激減し、地域によっては0〜1/10にもなってしまったといいます。生き物は半端なことはしないものです。
オナガはカラスの親戚であるだけに、学習能力が高く、団結して行動する能力もなかなかのものです。一族の命運は尽きるかというときに、先ず、自分たちの巣に産み付けられたカッコウの卵を見分ける眼力を備えてきました。あやしい卵を巣から放り出してしまうようになったのです。次いで、何がなされつつあるのかの仕組みを理解するようになり、グループで営巣地を見張っていて、カッコウが近づくと激しく攻撃するようになったといいます。
オナガ復調か
そうしたわけで、たしかにこの頃、オナガを見かけることが多くなりました。竹の林を好むようで、中で鳴きかわすだみ声を聞くことがしばしばあります。一時期よりも色つやが良くなり、体格もがっしりしてきたように見えるのは気のせいでしょうか。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。