多摩川中流の明け方。街灯などの光から遠ざかれば、けっこうな星空が見られるころ。
東天の雲が刻々と色を増して輝き、やがて上流へ向かうダイサギやカワウの群が上空を通り過ぎます。雲と水鳥たちの様子に二度と同じものはないので、いくら岸辺に通っても飽きることがありません。
そんな晩秋の朝、岸辺を離れようとしたとき、すぐ脇を定規で引いたように「ツー」と青い線が引かれていくのを2・3日続けて見ました。「カワセミ」です。 そのカワセミは、水面に張り出している灌木の一本の枝に、3日続けて止まりました。お気に入りの枝のようです。
この写真は11月1日の6時01分に撮られています。日の出前の暗みが残っている頃なのでオートフォーカスが正確に作動していないようですが、オス(クチバシの下側が紅ければメス)であることは分かります。
カワセミ 縄張り破りに出会う
3日目、そのカワセミは枝を離れると上流に向かい、ザラザラに削られたコンクリートブロックに止まりました。
そのまま、硬直したようにうごきません!
近づくと・・・居ました。縄張りに侵入してきたらしいオスです。
探りと威嚇 大きく見せる仕草
両方とも後ろ髪を逆立てており、小刻みに近づいたり離れたり、対面したり横並びになったり、時には背を見せ合ったり、立ち位置に高低の差をつけたり、そうしながらも交互に首を伸ばして身体を大きく見せようとします。伸びあがりの姿やタイミングに個性が見られます。しばらく静止して睨み合う様子は、相撲の「仕切り」に似ています。
熱帯地方に棲む或る水鳥は、肩を極端にすぼめながら首を柱のように垂直に伸ばすポーズをとることがあるそうです。正面から見ると鎌首を高々と持ち上げた蛇にしか見えません。これに向き合ったものは、毒蛇に射竦くまれたと勘違いすることでしょう。
カワセミは、大きなクチバシとこれを支える大きな頭、短い尻尾のためにズングリしているものですが、それなりに精一杯に背伸びをしあう様子はカワセミばなれしており、やはり殺気を放っています。
鎮もった清流の決闘者
キエーイ!! 必殺技
見たか! なんの!
これらが撮られたのは11月3日の6時19分。この時期に多摩丘陵から太陽から太陽が顔をのぞかすのが6時30分ごろ。まだ光が淡いために、カメラ任せのシャッターは125分の1秒と遅く、どの画面も流れてしまっていますが、敏速な動きを表現するテクニックだとすることにします。
どうだ 追い出したろう
20分以上も続いた激闘のすえ、ようやく侵入者を追い出すことができました。お気に入りの枝に戻って、得意げな様子です。ようやく日が届きはじめ、翡翠がきれいに映えています。
これからも元気で・・・。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。