良太のお父さんは、おおきな街の清掃課というところに勤めている。ゴミを処分するセンターの工場がうまく運転されるように、手入れをしたり直したりする仕事をしているのだそうだ。
毎日、スチームで沸かした風呂に入ってから、背広に着替えて帰ってくる。けれど、身体に浸み込んでいる生臭さが抜けきれていないように、良太には感じられた。ごつごつした手でビールを飲んで、ほとんど話をしない。しらけてしまう。
中学一年生のとき、街のゴミの処理場に見学に行くことになった。
「えらいことになった」
良太は思った。仲間のうちには良太のお父さんの顔を知っているのがいる。なかでも茂夫はしつこいから、まず二週間はひやかされ続けるだろう。見学の当日、良太は列のいちばんうしろに回って、うつむきながら歩いた。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。