中学二年の晩秋の夕暮。私たちは一列縦隊になって山道を走っていた。まず足腰を鍛えようという野球クラブの訓練で、学校から出て「黒川渡ダム」をひとまわりして帰ってくるというのが定番のコースだった。なるほど、木の根や石ころをうまく避けて走ることは野球のためにもわるくないトレーニングだったろう。急な坂をのぼりつめると、こんどは木の間越しに黒い水面を透かしながらの下り坂が続いた。私たちは勢いづいて駆け下りにかかった。
「なんだ!」
先頭を引き受けていた先生がいきなり立ちすくんだので、全員がたたらを踏んで追突をくりかえし、斜面から落ちかかった者もいるほどの混乱となった。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。